タイトル | 消費者に好まれる乾しいたけの栽培技術の開発 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
平出 政和 横山 一郎 |
発行年度 | 2006 |
要約 | 日本の食卓になじみ深い乾しいたけの嗜好調査を行い、消費者の好みを明らかにすると共に、特に香りに焦点を合わせた品質の改良方法を開発しました。 |
背景・ねらい | 乾しいたけの消費量は年々減少しており生産農家の経営を悪化させています。2000年に行ったアンケート調査から、年をとるに従って乾しいたけを好きになる傾向が見られましたが、10代では嫌いな人が多く、成長と共に嗜好が変化しなければ消費量の減少に拍車をかけてしまいます。一方、香りは味覚以上に食品の評価に大きな影響を与えることも明らかになっています。菌床栽培できのこの付加価値を高めるため香り成分の調製方法は開発されていますが、日本で生産される乾しいたけは全て原木栽培品であり、原木栽培での調整方法は開発されていません。 そこで、乾しいたけに対する嗜好の変化を探ると共に、原木の処理による香り成分の調製方法を開発しました。 |
成果の内容・特徴 | アンケート調査2000年と2005年に10代以上の一般人300余名を対象に行ったアンケート調査から、両年共に乾しいたけが「嫌いな人」約15%に対して、「どちらでもない人」約18%、「好きな人」約67%という結果が得られ、全体として「乾しいたけが好き」という傾向は変化していませんでした(図1)。年代別に比較した場合も両年に差違はなく、10代から20代にかけて「嫌いな人」は減少し、「好きな人」は増加することも明らかになりました(図2)。以上のことから、大きな問題が生じなければこれらの傾向は変化しないと考えられます。一方、最も好ましく感じる香り成分量を与える乾しいたけの量を調べたところ、最も少ない10代「好きな人」は0.6gでしたが、20代以降は概ね2gを超え、50代以降の「非常に好きな人」は8.7gでした(表1)。一般に、一回に食する量は1gとされていることから、市販品では香りが弱いことも明らかになりました。 香り成分量調製方法乾しいたけ独特の香り成分は、レンチニン酸という物質が乾燥中に酵素と熱の働きにより分解されて生じます。レンチニン酸の量は、菌床を用いた実験からアミノ酸の一種であるシステイン及びグルタミン酸を培地に添加すると増加することが明らかになっています。そこで、しいたけ発生前のほだ木に両アミノ酸を注入したところ、しいたけに含まれているレンチニン酸の量を無処理と比べて約3倍まで増加させることに成功しました(図4)。また、旨味成分であるグルタミン酸も注入処理により副次的に最大30倍増加させることに成功しました。以上のことから、原木への添加物注入により香り成分量および旨味成分量等の品質改良が可能であることを明らかにしました。 今後の課題アンケート調査時に乾しいたけに対する不満を聞いたところ、多くの人が水戻し時間の長さを挙げました。約80%の人が夕食の調理に費やす時間は60分以下との調査結果も出ていることから、需要を伸ばすには、水戻し時間の短縮についても検討が必要です。本研究は、交付金プロジェクト「機能性成分を強化したきのこの成分育種及び栽培技術の開発」による成果です。 詳しくは:Hiraide and Yokoyama (2007). Journal of Wood Science. DOI:10.1007/s10086-006-0874-4 等をご覧下さい。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
カテゴリ | 育種 香り成分 乾燥 機能性成分 経営管理 栽培技術 しいたけ |