KumaDAS(クマダス)のススメ

タイトル KumaDAS(クマダス)のススメ
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 岡 輝樹
発行年度 2006
要約 過去約10年間のツキノワグマによる人里域への出没頻度を分析した結果、近隣の府県間で似たような傾向が見られました。このことから、ブナやドングリなど堅果類の豊凶を調べることで、全国各地でクマ出没の予報システム(クマダス)を構築することができる可能性がでてきました。
背景・ねらい 2006(平成18)年は、史上最悪の規模でツキノワグマが人里域に出没し、大きな社会問題となりました。人身被害件数は全国で140件に達し、有害獣として駆除されたツキノワグマの数は5,000頭を超えました。
いま、「山の実」とくにブナやドングリなどの「堅果類」が豊作か凶作かによって、ツキノワグマによる人里への出没多発を予測しようという取り組みが各地でおこなわれています。しかし、これまでのデータの蓄積がないため、こうした「山の実」の豊凶が本当にクマ出没と関係があるのか、よくわからない地域も多いようです。
ところで、堅果類の豊凶は広い範囲で同じように変動することが知られています。ということは、もしクマの出没がこの豊凶に関連して起こるものであるなら、出没の変動パターンも近隣の県で似たものとなるはずです。そこで、人里への出没の多少を示す有害駆除数の変動パターンが、どの程度似ているかを調べてみました。
成果の内容・特徴

KumaDAS(クマ出没予測システム)

数年に一度起こる東北地方のクマ出没多発は、主としてブナの凶作で説明できそうだといわれています(平成15年度研究成果選集)。2001年にクマの出没が多発した岩手県は、この研究成果をもとにブナの豊凶調査を始め、2006年春に初めてのクマ出没注意報を発令しました。市町村、関係各機関は様々な対策を取り、人里での人身被害を少なくすることができました。
現在、各県の担当課が中心となって「山の実」の成り具合についての情報を集め、その結果からクマの人里への出没多発を予測しようとしています。これは天気予報にも似ているので、地域気象観測システムAMeDASにならってKumaDASと呼ぶことにしましょう。2006年の岩手県の例はKumaDASが被害軽減に有効であることを示したことになります。

堅果類の凶作がクマを出す?

さて、どの地域でもクマの出没は堅果類の豊凶と関係しているのでしょうか。クマによる被害を受けている23府県25地域における1993年~2004年のツキノワグマ有害駆除数がどのように変動したかを解析したところ、近隣県では確かに同じように変動していることがわかりました(図1)。つまり、ある県がクマの出没多発に悩んでいる年はその隣の県でもクマ騒動が起きているということです。これは、県レベルを超えた広い範囲で堅果類の豊凶が同調していることと関係があるのではないかと推察されます。

広域KumaDASも可能

KumaDASは全国の多くの地域で取り組み可能です。しかし各県だけでの取り組みには限界もあります。出没パターンが似ている近隣県は協力してデータを収集、分析することにより、クマの出没多発をより精度よく、また広域的に予測し、被害回避のための策を事前に検討することができるようになるでしょう。また、森林総合研究所が公表している全国のブナ結実状況データベース(http://ss.ffpri.affrc.go.jp/labs/tanedas/index.html)も役立つでしょう。

本研究は環境省公害防止等試験研究費「ツキノワグマの出没メカニズムの解明と出没予測システムの開発」の一環として実施されました。

詳しくは:Oka, T. (2006) Mammal Study 31(2): 79-85をご覧ください。
図表1 212698-1.gif
カテゴリ データベース

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