地下水の流れる音から山崩れの場所を予測する

タイトル 地下水の流れる音から山崩れの場所を予測する
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 多田 泰之
発行年度 2008
要約 山崩れ災害を防ぎ、国民の生命と生活の安全・安心を守るため、山地斜面で地下水の流れる音の強弱を探知することによって、山崩れの危険性が高い場所を特定する新たな手法を開発しました。
背景・ねらい 毎年梅雨や台風等に伴う集中豪雨により山地で山崩れが起こり、尊い命が失われています。また、近年、記録的な集中豪雨がしばしば発生しており、今後とも山崩れ災害を防ぐ対策技術の開発が求められています。山崩れ災害を防ぐためには、山崩れの発生する場所を事前に予測する必要があります。
一般に、山崩れの原因は地形・地質などの因子と降雨や地下水などの水の因子に分けられ、両方の条件が複合して、原地形を維持できない条件に達したときに山崩れが発生します。これまで山崩れの発生しやすい場所は、地形・地質などの因子のみから評価されてきましたが、水の因子はむしろこれらよりも重要なのです。しかし、水の因子である地下水の評価には実用的な技術がなく、これまで評価がほとんど行われてきませんでした。
そこで、地下水が流れるときに発生する「音」の強弱から、簡便に地下水の集中する場所を特定し、山崩れの発生する場所を従来よりも高精度に予測する技術を開発しました。
成果の内容・特徴

1.地下水の流れる場所を調べる

山崩れの多くは大雨が降った時に発生します。これは雨が土に浸透し地下水が発生すると、土の強度が失われ不安定になるためです。広い山の中でこの地下水の発生する場所を知ることが、山崩れが起きる場所を事前に特定する大きな鍵となります。そこで、山崩れの起きるような急勾配の山で、地下水の発生しやすい場所を調べるために「地下流水音探査技術」を開発しました(写真1)。
地下水が岩盤の亀裂や土粒子の間隙(すき間)に入り込むと、間隙中にあった空気を押し出します。このとき、間隙に気泡が生じこれが割れると「コロコロ」・「ボコボコ」・「ゴー」などの曝気音が生じます。これを地下流水音と呼びます。
地下水が多く流れている場所では、土の中の空気と水が盛んに交換されます。つまり、地下水が多く流れている場所ほど大量の気泡がはじけ、地下流水音の強さが大きくなります。地下流水音探査では、高感度な聴診器を使ってこの音の強い場所を探すことで地下水の流れる場所を特定します。

2.山崩れの場所と地下流水音の強さ

山崩れの起きた場所で地下流水音の強さを調べた事例を図1で紹介します。なお、図中のグラフは写真の青色の点線上で測定した音の強さを表しています。また、 A、B、C は山崩れの位置を表し、上の写真に対応しています。山崩れの発生した場所では、周囲に比べて地下水流水音が強くなっています。このような結果は、谷型・尾根型などの斜面形状や地質の種類に関係なく多くの斜面で確認されました。山の中で地下水の発生する場所を知ることが、山崩れの場所を予測するのに重要であることが明らかになりました。

3.山崩れの場所を予測する

地下流水音探査により、地下水が集中して崩れる危険性の高い場所を林道のり面で調査しました(写真2上)。その結果、のり面には崩れる危険性が高い地下流水音の強い場所が発見されました(図2中の矢印の範囲)。この危険と判断された場所は、その後の台風による大雨で実際に崩れ(写真2下)、本手法が山崩れの危険性の高い場所を予測するのに有効であることが確認できました。今後は、この手法を広く普及させるために、誰でも地下水の流れる場所を簡単に特定できるように改良する予定です。

本研究は、京都大学防災研究所COEプログラム、および、文部省科学研究費補助金(17688007)地下流水音による斜面崩壊発生場所の予測手法の開発の成果です。また、(株)拓和と共同で特許を申請しています。

詳しくは、「多田泰之ほか(2007) 砂防学会誌 60(4) 25-33」をご覧ください。
図表1 212705-1.jpg
図表2 212705-2.jpg
図表3 212705-3.jpg
図表4 212705-4.gif
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