実大サイズの木材が衝撃力を受けたときの現象が分かった

タイトル 実大サイズの木材が衝撃力を受けたときの現象が分かった
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 加藤 英雄
長尾 博文
井道 裕史
井戸 聖富
発行年度 2008
要約 落石防護柵や自動車用防護柵などを想定した木材の耐衝撃性を評価する装置と計測システムを開発した結果、力と変形が単調ではなく振動を生じながら増加していく様を捉え、力と変形の伝達機構が分かりました。
背景・ねらい 落石防護柵や自動車用防護柵など外構材として、木材を利用する試みが各地で進められています。これらの部材は、衝突のときに曲がることで性能を発揮します。このとき、衝突により発生する部材の変形の仕組みや強さなどの耐衝撃性が重要になります。しかし、これまでは、質量の大きい鋼材やコンクリートで試験は行われてはいるものの、質量の小さい木材についてはほとんど行われていないのが現状です。
そのため、木材に適した耐衝撃性を評価する試験装置と計測システムを開発しました。
成果の内容・特徴

木材の耐衝撃性を評価するには?

耐衝撃性の試験として、図1のように2点で支えた試験体におもりを自由落下させて衝突させる衝撃曲げ試験があります。衝撃現象は、極めて瞬間的であることから、試験装置や計測システムが試験を成功させるかどうかのキーとなりますが、これまでは実大サイズの木材の試験に適する良い方法がありませんでした。そのため、本研究では、1)実大サイズの部材の試験ができる治具を開発すること、2)装置と試験体の挙動を測定できる加速度計とひずみゲージなどのセンサーを適切に選定すること、3)短時間に変化するセンサーからの情報を適切に記録する方法を確立することが重要でした。このようなことを踏まえて開発した方法により、落石防護柵や自動車用防護柵用の円柱加工木材の衝撃曲げ試験を行いました。試験では、1秒間に50万回の割合で加速度とひずみの変化を同時に計測するとともに、1秒間に2万フレームの割合で試験体の変形の様子を高速度デジタルカメラで撮影することに成功しました。

おもりが衝突したとき、どうなっているか?

木材が破壊するまでの変形挙動は、以下のような過程でした。すなわち、図2のように、おもりが試験体に衝突した直後のAからBまでの間、荷重が増加しながらおもりは減速しました。また、試験体はひずみが増加し、変形し始めました。次に、おもりと試験体の間に隙間が生じ始め、Bの時点で隙間が最大になりました。このとき、荷重が減少しそれに伴っておもりは再び加速しました。同時に、試験体のひずみは減少し変形が戻る挙動を示しました。変形が元に戻る前に、Cのようにおもりが試験体に再び衝突しました。そのため、最初の衝突と同じような挙動が再び発生しましたが、ひずみは完全に元には戻っていないため、更にひずみは大きくなりました。このような挙動が、試験体に破壊が生じるDまで繰り返されました。このような結果から、耐衝撃性を定量的に評価するには、応力波*や慣性力*の影響が含まれることに考慮して解析する必要があります。

本研究は、和歌山県の戦略的研究開発プラン「木製落石防護柵の開発」の共同研究として実施されました。また、高速度デジタルカメラの撮影は、(株)フォトロンの協力により行いました。

*応力波;材料が衝撃力を受けたとき発生し、時間の経過に伴い材料内部を伝わっていく力です。
*慣性力;慣性は「止まっているものは止まり続け、等速度で動いているものは等速度で動き続けようとする性質」で、慣性力は質量が慣性を持つために現れる見かけの力です。
図表1 212709-1.gif
図表2 212709-2.jpg
カテゴリ 加工 防護柵

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