熱帯乾燥地に炭素を蓄える

タイトル 熱帯乾燥地に炭素を蓄える
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 田内 裕之
宇都木 玄
発行年度 2008
要約 乾燥地や塩集積地等、地球上には利用されていない土地(荒漠地)が膨大な面積を占めますが、最適な植林技術によって、熱帯域だけで人間活動による炭素排出量の20%相当を吸収できることが分かりました。
背景・ねらい 地球上には、人間が利用していない荒漠地が、乾燥・半乾燥地帯を中心に陸地面積の30%以上あります。その多くの原植生は森林でしたが、過剰な農耕や放牧などによって土地が疲弊したため、植生が極めて貧弱な荒漠地へと変化したものです(砂漠化現象)。このような土地では、一層土壌の乾燥化が進んだり、塩類が表層土壌へ集積したりしています。このような乾燥した荒漠地に森林が育成できれば、そこを二酸化炭素の吸収源や炭素の貯留庫として機能させることができます。
我々は、熱帯・亜熱帯地帯にあるオーストラリア内陸部において、(1)植林に有望な樹種を選定し、(2)土壌タイプ別の植林技術の開発を行い、この技術によって (3)植林が可能な面積と炭素固定量の推定を行いました。
成果の内容・特徴

(1)ストレスに強く成長の旺盛な樹木の探索

対象とした荒漠地では、耐乾燥性や耐塩性等を兼ね備えた樹木を植栽することが必要です。そこで、耐乾性の強い樹種を利用し、灌水の塩濃度を上げた時にどれ位の耐性を持つかを調べました。一般に、成長量と耐性との間には反比例の関係が見られるのですが、ユーカリの一種である Eucalyptus camaldurensisは高い塩濃度でも死なずに成長が旺盛である事が分かりました。
また、塩類集積地では土壌の表層(0~50cm)に高濃度の塩類が集積します。それより深い層では、樹木が成長できる塩類濃度であるため、根がこの表層土壌を突き抜け深く伸長できる樹種が有望となります。塩類を回避するため、細長い育苗パイプに苗木を植栽したところ、E. camaldurensis は素早く根を1m以上伸長させ、パイプに植えられたにもかかわらず成長量(炭素固定力)が落ちないことが分かりました。これらから、塩類や乾燥というストレスに強く炭素固定能力の高い樹種はE. camaldurensisである事が分かりました。

(2)2つの土壌タイプにおける植林方法

対象地域には表土に硬盤が発達するハードパン型土壌と表土に塩類が溜まってくる塩類集積土壌の2つのタイプの荒漠地が存在しました。ハードパン型土壌では、根が伸長できない硬盤層を爆破して土壌の物理性を改善した上で植栽を行うこと、塩類集積地では1m程度の長さのパイプに植栽した苗木を植え込む方法が良いことが分かりました。また、植栽本数もいずれの土壌タイプでも200本/ha程度で十分な成長量を示すことが分かりました。

(3)植林可能な面積と炭素の固定量

この技術の導入によって、乾燥地や塩類集積地においても年間2.5ton-C/ha程度の炭素固定が可能であることが分かりました。今回対象としたハードパン型土壌や塩類集積土壌の分布面積は、乾燥荒漠地にそれぞれ419.7および326.7百万ha存在し、地球上の荒漠地面積の18%を占めます。この地域での自然の植生による炭素固定量は0.0~0.2ton-C/haとほぼゼロに等しいため、植林によって新たに吸収・固定される炭素の量のポテンシャルは莫大なものになります。それは、地球上の人間が生活によって排出する炭素(7.1Gton-C/ha/yr)の26%(1.87Gton-C/ha/yr)に相当します。つまり、現在利用が出来ず放置されている荒漠地は炭素の吸収源、貯留庫として生まれ変わり、地球温暖化に歯止めをかけるものと期待されます。今後は熱帯域以外の異なる土壌タイプの荒漠地においても植林技術の開発を進めて行きます。

本研究は、環境省(GHG-SSCP Project)および NEDO(バイオマスエネルギー転換要素技術開発)プロジェクトの成果の一部です。

詳しくは、Tanouchi, H., et. al. (2006) Journal of Arid Land Studies15:267-270 外をご覧下さい。
図表1 212726-1.jpg
カテゴリ 亜熱帯 育苗 乾燥 バイオマスエネルギー

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