タイトル | 樹皮や合板を原料にバイオエタノールを製造する |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
池田 努 杉元 倫子 眞柄 謙吾 |
発行年度 | 2008 |
要約 | アルカリ前処理と酵素糖化を組み合わせた手法で、樹皮が付いたままの端材や接着剤を含む合板を、スギ材と同様にバイオエタノール製造のための原料として利用できるようになりました。 |
背景・ねらい | バイオマス燃料であるバイオエタノールは、環境に優しいエネルギーとして期待され、生産量は年々増えています。しかし、バイオエタノールのほとんどは、サトウキビやトウモロコシのような食用作物から造られているために、バイオエタノールの生産量が増えるにつれ、人間や家畜が食べる穀物が不足するという新たな問題が生じています。 この問題を解決するためには、食用作物以外で、これまで未利用だった資源からバイオエタノールを造れるようにする必要があります。今回私達は、樹皮が付いたままの端材、接着剤を含む針葉樹合板のような、これまで利用されることなく捨てられていた木質系廃棄物を用いて、効率よくバイオエタノールを製造する研究を行いました。 |
成果の内容・特徴 | バイオエタノール生産プロセス木質系バイオマスからバイオエタノールを製造する方法には、酵素を用いる生物的手法と硫酸を用いる化学的手法がありますが、私達は、自然環境に対する負荷が小さい「アルカリ前処理」と「酵素糖化」を組み合わせた手法を用いています。食用作物や草本類の場合には、すぐに酵素を使うこともできますが、木材のような硬い素材、樹皮や合板のように酵素の働きを阻害する無機物や接着剤が含まれる素材の場合には、酵素が使えるようにするための「前処理」と呼ばれる工程が必要になります。前処理の良し悪しでバイオエタノールの生産コストや自然環境に与える負荷が大きく変わるので、前処理は大変重要な工程です。アルカリ前処理は、木材から紙を作る工程と良く似ており、木材、タケ、稲わら、廃材、古紙など、あらゆる木質系バイオマスからバイオエタノールを製造することができます(図1)。またアルカリ前処理には、残渣として排出されるリグニンを回収してエネルギーとして利用することにより、木質系バイオマスを無駄なく利用することができるという利点があります。樹皮が含まれる端材や合板の利用私達は、樹皮が含まれるスギ端材やフェノール樹脂接着剤が含まれる針葉樹合板(図2)のような木質廃棄物に対し様々な条件でアルカリ前処理、酵素糖化を行い、これらが無垢材と同様に、バイオエタノール製造に利用できるかどうか検討しました。アルカリ前処理で得られたセルロースやヘミセルロースから成る前処理物の収率を比べると、端材や合板は、建築材等に使用される無垢スギ材に比べ 5%程度低い値でした(表1)。端材や合板は無垢スギ材に比べ無機物や化学物質が多く含まれるために、収率がやや下がると考えられました。しかし、次にアルカリ前処理物の酵素糖化を行った結果、端材、合板ともにグルコースが約85%という大変高い収率で得られました(図3)。これは無垢スギ材のグルコース収率とほぼ同じ値であり、無機物や化学物質による糖化阻害はほとんど起こらなかったと考えられました。 これらの結果より、「アルカリ前処理」と「酵素糖化」を組み合わせた手法では、樹皮が付いたままの端材や接着剤が含まれる合板を、無垢スギ材と同様に、バイオエタノール製造のための原料として利用できることを明らかにしました。 本研究は、農林水産技術会議委託費「低コストアルカリ処理による木質系バイオマスの酵素糖化前処理法の開発」による成果です。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | コスト さとうきび 低コスト とうもろこし |