タイトル | 世界初の実大木橋の破壊実験-壊してわかった既存木橋の残存強度- |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究担当者 |
軽部 正彦 青木 謙治 新藤 健太 藤田 和彦 山本 健 |
発行年度 | 2009 |
要約 | 木橋が安全であるかどうかを、壊して確かめることはできません。世界で初めて、実際に使われていた木橋を壊して、その強度を確かめることができました。 |
背景・ねらい | 1980年代に国内各地に数多く架けられた木橋は、30年近くの年月を経て、ところどころに傷みが出てきているものがあります。悪くなった場所を直して、安全に使い続けようとするためには、木橋の残存強度を正しく知ることが大切です。壊さずに残存強度を推し量る技術は、随分と進んできましたが、予想した残存強度が正確かどうか、確かめるチャン スはありませんでした。 今回、実際に現場で使われ架け替えで不要となった木橋を用いて、壊さずに測る非破壊検査と、実際に壊す世界初の実大木橋の破壊実験を比較して、木橋の残存強度を確かめた結果、木橋の安全性を推定できることがわかりました。 |
成果の内容・特徴 | 広島県下の自然公園内歩道橋として1990年5月に架設された下路式木造単純トラス橋は、木材の腐朽などの傷みから、13年後の2003年12月に解体撤去されました(写真1)。安全性が問題視されたこの橋は、残存強度が十分に判らないままに鉄橋に架け替えられましたが、関係者の協力により全ての部材と接合部品を回収することができました。現役を退いたこの木橋の第1径間(36.3m)を、2007年3月に実験場に再組立して、各種非破壊調査を行いながら継続的に観察してきました。こうしたデータを踏まえて、2008年6月に、破壊するまで土嚢を積載する載荷実験を実施しました(写真2)。 土嚢は、実験場にある土砂(約320kg)を袋に詰め、クレーンで木橋の上に載せていきました(写真3)。26袋(94.4kN)を積載したところで、上流側下弦材が千切れ、木橋が傾きました。さらに載せて行くと、53袋(189.7kN)で下流側上弦材が長手方向から押し潰されて、木橋が着地しました。 最初の破壊位置は、自然公園内にあった2000年に腐朽が生じていると指摘された箇所で、載荷実験直前にも部材の割れが拡大しているようだと注目していた部分でした(写真4)。最終破壊した位置は、部材上面中央に入った乾燥割れがV溝状の腐朽に進展した箇所でした(写真5)。 実験後に部材を切断してみると、破壊した箇所がひどく傷んでいた一方で、同じ期間使ってきたはずなのに全く健全な箇所があることが確認できました。傷んだ部位は含水率が高く、健全な部位は低いことから、腐朽した箇所について耐荷能力のある木材断面が推定可能であることが判りました(写真6)。 これらの結果は、国内各地にある木橋の安全性を確認するための非破壊調査結果を使った残存強度推定技術の精度向上に活用され、ひいては木造住宅など、木材を使った構造物全般の維持保全に活用されます。 本研究は「予算区分:運営費交付金プロジェクト研究、課題名:既存木橋の構造安全性を維持するための残存強度評価技術開発(アイd112)」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
カテゴリ | 乾燥 評価法 |