スギ花粉はどこから飛んでくるのか? ~首都圏に影響を及ぼすスギ花粉発生源の特定手法を開発~

タイトル スギ花粉はどこから飛んでくるのか? ~首都圏に影響を及ぼすスギ花粉発生源の特定手法を開発~
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 金指 達郎
篠原 健司
発行年度 2009
要約 スギ花粉飛散予報モデルを改良することによって、首都圏に多量の花粉を供給するスギ花粉発生源を特定する手法を開発しました。これにより、花粉発生源対策の効果を効率的に発揮させることが可能になると期待されます。
背景・ねらい スギ花粉症対策の一環として、スギ林における花粉生産量の削減が強く求められています。しかし、約450万haにも及ぶ広大なスギ林に対し、発生源対策を実施することは非常に困難です。特定の人口集中地域、例えば首都圏に飛来する花粉がどこから飛んで来るのかを明らかにできれば、効率的な対策が実施でき、その効果も早く発揮できることになります。そこで、森林総合研究所では「スギ花粉飛散予報モデル」を改良し、首都圏に飛来する花粉の発生源を特定する手法を開発しました。
成果の内容・特徴

首都圏に飛来する花粉の発生源推定手法

主要な発生源の推定には、文部科学省プロジェクト「スギ花粉症克服に向けた総合研究」(H9~H14年度)で作成された「スギ花粉飛散予報モデル」を改良して用いました。このモデルは、任意の地点における花粉濃度を時間単位で予測するために開発されたものです。各地の発生源から雄花量や開花のすすみ具合に応じた量の模擬花粉(スギ花粉に見立てた粒子)をモデル内で放出させ、その飛散動態を気象データなどから計算します。そのため、模擬花粉に発生源の座標を与えておくことで、特定の地点に到達した模擬花粉を発生源ごとに集計することが可能になります。
ただし、特定の地点に多量の花粉が飛来したとしても、そこに人が住んでいなければ花粉症対策上は特に問題は生じません。そのため、人口密度を考慮することで、「地域内に居住する人々が浴びる花粉が主にどこから飛んできたのか」を推定することにしました。

首都圏を対象とした事例

本州中部で26年生以上のスギ林の分布を調べると、スギ林が特に多い地域は、茨城、福島、栃木の県境付近、栃木県西部、埼玉県西部、東京都西部、静岡県西部などであることがわかります(図1)。
人口集中地域の事例として、首都圏(東京駅を中心とした東西約50km、南北約40km、図中の青線)に居住する人々が浴びる花粉がおもにどこから飛来したかを、2008年の花粉飛散最盛期を対象に推定しました(図2)。その結果、スギ林の多い埼玉県や東京都西部の影響が高いことがわかりました。また、これらの地域に比べるとスギ林がやや少ない神奈川県西部や房総半島中北部からの影響も高いことがわかりました。これらの地域に、伐採や植え替えなどの花粉発生源対策を優先することで、対策の効果を早めることができます。
ただし、この推定結果は年によって異なる可能性があります。各発生源の影響の強さは、風向など気象条件や各地での雄花生産量によって大きく影響されるからです。そのため、花粉発生源対策を優先させる地域の選定にあたっては、数年間の結果を集計して決定する必要があります。

本研究の一部は、農林水産政策を推進する実用技術開発事業「スギ雄花形成の機構解明と抑制技術の高度化に関する研究」による成果です。また、(財)気象業務支援センターとの共同研究によるものです。
図表1 212741-1.jpg
図表2 212741-2.jpg
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