効率的・効果的なマイクロ波減圧水蒸気蒸留法の開発 -スギ葉の精油成分の利活用に向けて-

タイトル 効率的・効果的なマイクロ波減圧水蒸気蒸留法の開発 -スギ葉の精油成分の利活用に向けて-
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大平 辰朗
松井 直之
金子 俊彦
田中 雄一
発行年度 2009
要約 樹木精油の効率的・効果的な採取方法として減圧条件下でマイクロ波を熱源にした水蒸気蒸留装置を開発しました。本法によれば、揮発しやすく嗜好性の優れたモノテルペンの割合が高い精油が短時間で採取できます。
背景・ねらい 葉などの林地残材は、有効な利用法が開発されておらず、その用途開発が重要な課題となっています。樹木の葉には香り成分である精油が含まれており、リラックス効果、抗菌作用など様々な機能があり、芳香剤、忌避剤、消臭剤などの用途が期待されます。このため、精油の原料として葉などが活用できれば、資源の有効利用につながります。しかし、現存の精油の採取法である水蒸気蒸留法は、加熱により精油成分が変質を受けやすいこと、精油採取後に廃液が大量に排出されることなどの問題点があり、新たな採取法の開発が求められていました。
そこで、減圧条件下にて熱源にマイクロ波を利用した画期的な水蒸気蒸留法を開発しました。
成果の内容・特徴 開発した装置の特徴は、マイクロ波を利用する点と減圧条件下で水蒸気蒸留を行う点にあります(写真1)。

熱源にマイクロ波を利用

一般的な水蒸気蒸留法では植物体に大量の水を加えます。そのため、採取後に大量の廃液が残り、それらの処理の問題が生じます。本装置ではマイクロ波により植物体に含まれる水分を直接加熱し、蒸発した水分による蒸留を可能としました。そのため採取時には水分を添加する必要がなく、採取後の廃液が大幅に少なくなります。また、残渣は採取前よりも乾燥した状態になっており、利用する上でも取り扱いが容易になります。さらにマイクロ波の利用により植物体に含まれる水分が均一かつ効率的に加熱されますので、短時間(約1時間)で蒸留を行うことができ、消費エネルギーも低減させることができます。

減圧下で蒸留を行う

精油は水蒸気とともに蒸留されることで得られます。一般的な方法では水蒸気を吹き込むなどの方法が採られますが、この方法ですと100℃前後に加熱されるため、精油が変質してしまいます。ここで開発した装置は減圧下で操作を行うため、蒸留が起こる温度を大幅に低下させることができ、変質が抑えられます。さらに本装置では、減圧条件の調整が可能で、このことにより採取される精油の組成を変化させることができます。そのため、使用目的に応じた組成を有する精油が植物体から直接採取可能となります。

実施例

本法(減圧条件:0.2気圧、温度:67℃)にてスギ葉(約50kg)から180mLの精油がわずか1時間で採取できました。その組成を一般的な水蒸気蒸留法で得られる精油と比較すると、本法で得られる精油はモノテルペン(揮発しやすく、フレッシュ感のある香り)の割合が極めて高いことがわかりました(図1)。
この傾向は他の樹種においても同じでした。

これらの成果は、未利用資源である葉など林地残材の有効利用の一助として活用されることが期待できます。
今後は、精油採取残渣の用途開発や大量生産に向けた操作性の検討などを行う予定です。

本研究は、(独)科学技術振興機構の革新的ベンチャー活用開発事業「樹木精油を利用した環境汚染物質の無害化剤」の一環として、日本かおり研究所(株)と共同で推進しました。

また、本研究で開発した製造装置については、日本かおり研究所と共同で特許出願しています。
図表1 212748-1.jpg
カテゴリ 香り成分 乾燥 未利用資源

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