小さくても丈夫が取り柄、埋めて使えるCO2濃度センサー

タイトル 小さくても丈夫が取り柄、埋めて使えるCO2濃度センサー
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 安田 幸生
溝口 康子
大谷 義一
発行年度 2009
要約 土壌中のCO2濃度を長期測定するために、土壌埋設用の小型で頑丈なCO2濃度計を開発し、その性能を評価しました。その結果、野外実験によって十分な性能をもっていることを確認しました。
背景・ねらい 森林土壌は、落葉・落枝などを起源とする有機物の分解や樹木の根の呼吸によって二酸化炭素(CO2)を放出しています。土壌からのCO2放出量は、樹木の葉の光合成によるCO2吸収量に匹敵するほどの量になるため、森林生態系のCO2収支を解明するには土壌中のCO2動態の調査が大変重要です。土壌表面から大気中へのCO2放出過程は近年盛んに研究が行われていますが、土壌中におけるCO2濃度分布やCO2移動に関する研究は多くありません。これは、土壌中CO2濃度を測定する専用測器がなかったことが一因です。そこで今回、小型で頑丈な土壌埋設用のCO2濃度計を開発し、野外においてその性能を評価しました。
成果の内容・特徴

土壌埋設用CO2濃度計の開発

これまで、土壌中CO2濃度の連続測定は大気測定用のCO2濃度計を土壌中に埋設して行われてきましたが、本来の使い方と異なる使用法のため測器の耐久性に問題がありました。そこで、耐久性にすぐれた土壌埋設専用のCO2濃度計を開発しました。開発のおもな目標は、「1. 丈夫であること」、「2. 小型であること」、「3. 低価格であること」の3点です。これらの点は土壌中CO2濃度の長期測定を実現するための重要なポイントと考えました。
開発した土壌埋設用CO2濃度計(写真1)には、防水・防塵加工を施し、野外の自然条件下での長期間(数ヶ月から一年間)にわたる埋設に耐えられるようにしました(1. 丈夫であること)。CO2濃度の検出部には市販されているCO2センサー(CO2 Engine K10、SenseAir社、スウェーデン)を用いました。また、温度センサーと相対湿度センサーを搭載し、CO2濃度・温度・相対湿度の同時測定を可能にしました。濃度計内の電子回路基盤やセンサーの配置位置などを工夫することにより、サイズを約100×65×40mm(横×縦×高さ)におさえました(2. 小型であること)。濃度計の作成に使用した部品は、すべて市販品を用いたので、低コスト化を実現しました(3. 低価格であること)。

土壌中CO2濃度測定(野外テスト)

このCO2濃度計を実際に土壌中に埋めて、深さ0cm(地表面)から50cmまでのCO2濃度を測定しました。約二ヵ月半の測定の結果、土壌中におけるCO2濃度変動の特徴をとらえることができました(図1)。CO2濃度は土壌の深いところほど高くなりました。また、日々の濃度変動は土壌の浅いところほど大きくなりました。1月中旬にすべての深さにおいてCO2濃度が一時上昇しましたが、これは暖かい日が続き、地温が上がったことが要因の一つと考えられます。
CO2濃度の日変化は土壌の浅いところで顕著にみられます。温度と相対湿度の同時測定の結果(図2)、CO2濃度の日変化は、温度の日変化と同じ傾向であること(温度が上がるとCO2濃度が上昇)、相対湿度の変化とは逆の傾向となること(相対湿度が下がるとCO2濃度が上昇)がわかりました。
このように、開発したCO2濃度計は、土壌中CO2濃度の長期測定のための十分な性能を持っていることを野外テストによって確認しました。

本研究の一部は科学研究費補助金(若手研究 B)「土壌中における二酸化炭素濃度の鉛直・水平分布と時間変動の解明」、一般研究費およびバロン電子株式会社との共同研究による成果です。

詳しくは Yasuda, Y. ほか (2008)  Journal of Forest Research 13:312-319 をご覧ください。
図表1 212751-1.jpg
図表2 212751-2.gif
図表3 212751-3.gif
カテゴリ 加工 低コスト

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