森林の炭素貯留機能に貢献する切り捨て間伐木

タイトル 森林の炭素貯留機能に貢献する切り捨て間伐木
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 酒井 佳美
石塚 成宏
松浦 陽次郎
稲垣 善之
高橋 正通
発行年度 2009
要約 15の道府県で我が国の主要な植栽樹種の切り捨て間伐木が分解する速さを測定しました。寒い地域では暖かい地域よりも分解する速さが遅く、炭素の貯留時間が平均して約2倍ほど長くなることが分かりました。
背景・ねらい 森の中では、枯れ木をよく見かけます。枯れ木は、分解者と呼ばれる微生物などによって分解されることで二酸化炭素を放出します。しかし、枯れ木は分解される速さがゆっくりしているので、温暖化防止のうえで炭素を貯留する機能を持つ場として注目されています。
近年、我が国の人工林では、間伐で生じた伐倒木が集材されずに林地に放置される「切り捨て間伐」が増えています。切り捨て間伐木は人の手で作られた枯れ木であり、自然に生じた枯れ木と同じようにゆっくりと分解します。切り捨て間伐木は、いつ伐倒されたのかがわかります。そこで、切り捨て間伐木が、どの程度の速度で分解し、何年くらい林床に残存するかを全国規模で明らかにしました。
成果の内容・特徴

切り捨て間伐木の分解速度を全国で調査

本研究では、北海道から九州までの15の道府県のスギ、ヒノキ、カラマツ、トドマツ、アカエゾマツの人工林17地域で、伐倒年の異なる複数の林を選び、切り捨て間伐によって発生した伐倒木が分解する速さを測定しました(図1)。今回の結果は、約2000本の伐倒木のデータを元に推定しています。

寒冷地で炭素が留まる年数は暖地の2倍

分解によって直径10cmくらいの切り捨て間伐木の重さが半分にまで減少するには、寒冷地に生育するカラマツとトドマツ、アカエゾマツでは平均すると30年程度かかりますが、本州以南のスギやヒノキはおおよそその半分の年数でした。アカエゾマツやトドマツ・カラマツ、そして、スギとヒノキでは、植栽される地域が異なります。そこで、材が分解される速さと、月平均気温が0℃以上の合計値である「積算気温」とを比べたところ、切り捨て間伐木が分解される速さは、寒冷な気候であるほど遅いことが明らかになりました。材が分解される速度から、分解によって重さが半分になるまでにかかる年数を「半減期」として計算すると、切り捨て間伐木が炭素を貯留する年数は、寒い地域ほど長期になることがわかりました(図2)。この、「積算気温」と「半減期」との関係は、切り捨て間伐木が林床に残存する年数の推定を可能にし、材に炭素が貯留される年数を計算するのに役立ちます。

地球温暖化と切り捨て間伐木

現在、全国的に間伐遅れの人工林が多いことから、間伐を促進する施策が推進されています。これによって、切り捨て間伐木の増加が予想されます。本研究から、切り捨て間伐木の重量が半分になるまでには、10年以上かかることがわかりました(図2)。つまり、これらの切り捨て間伐木は、重要な炭素貯留の場として機能し、森林の地球温暖化防止を担っているといえます。

本研究は、林野庁・森林吸収源計測・活用体制整備強化事業による成果です。
詳しくは、酒井佳美ら(2008)森林立地 50(2):153-165 をご覧ください。
図表1 212752-1.gif
図表2 212752-2.gif
図表3 212752-3.jpg
図表4 212752-4.jpg
カテゴリ くり

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