壊さず測るドングリの化学成分

タイトル 壊さず測るドングリの化学成分
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 島田 卓哉
柴田 銃江
高橋 明子
河野 澄夫
発行年度 2009
要約 コナラのドングリに含まれるタンニンの含有率を、近赤外分光法を用いて非破壊的に測定する方法を開発しました。
背景・ねらい 「ドングリの背比べ」という言葉がありますが、一つ一つのドングリを実際に比べてみると大きさや含まれる成分には大きな違いがあります。地上に落ちたドングリは、野ネズミや鳥類、昆虫などの様々な生物に利用され、ごく一部が芽生えとなり生き残ります。どのような特徴のドングリが生き残りやすいのかを明らかにすることは、森林の天然更新の過程を理解する上で重要な課題です。しかし、これまでは成分を測定するためにはドングリを粉砕しなければならず、そうするとそのドングリの生存過程を調べることは出来ないというジレンマがありました。そこで本研究では、近赤外分光法という手法を用いて、ドングリを壊すことなく成分を測定する手法の開発を行いました。
成果の内容・特徴 近赤外分光法は、個々の物質が近赤外光領域(図2)において固有の波長の光を吸収することを利用し、近赤外光の吸光度から目的の物質の含有率を測定する方法です。光を照射するだけで迅速かつ非破壊的に成分を測定できることから、近赤外分光法は果実の糖度計測など食品・農業分野で広く実用化されています。しかし、ドングリのような厚い皮を持つ種子に対しても適用可能かどうかは確かめられていませんでした。

本研究では、コナラのドングリに含まれるタンニンを対象として非破壊測定法の開発を行いました。タンニンは植物に含まれるポリフェノールの一種で、多量に摂取すると消化管や腎臓肝臓に損傷を与えることが知られています。また、抗菌作用を持つことも知られています。そのため、一般的にドングリの捕食者はタンニンの多い餌を避ける傾向を持ちます。したがって、タンニン含有率の違いは、ドングリの生存過程に影響を及ぼすものと推測されます。
2007年9月から11月にかけて岩手大学滝沢演習林(岩手県滝沢村)で採取した健全なコナラのドングリ512個をサンプルとして、以下のような手順で分析を行いました(図1参照)。
  1. ドングリの近赤外光領域のスペクトルを測定する。ドングリを測定するための特別のアタッチメントを付けた携帯型近赤外分光器NIR-GUN(図3、(株)果実非破壊研究所)を用い、ドングリを透過した光(透過光)を測定する。
  2. ドングリの皮をむき内容部だけを取り出し、乾燥、粉砕の後、タンニンの分析を化学的方法で行う。
  3. 2の化学分析値と1のスペクトルの値をもとに、統計学的な手法によってタンニンの検量モデルを作成する。
その結果、相関係数が0.93(1に近いほど高精度)という高い精度の検量モデルを作成することが出来ました。そればかりでなく、同様の手順で他の成分(タンパク質、脂質、糖質など)の検量モデルも作成することが可能です。この方法で成分の含有率を推定したドングリを利用することによって、ドングリに含まれる様々な成分がドングリの生き残りにどのように関わっているかを明らかにすることが出来るでしょう。これらの成果は、里山の代表的な樹種であるコナラ林の天然更新過程を解明する上で、貴重な情報となることが期待されます。

本研究は、文部省科学研究費補助金「種子の生存過程追跡のための非破壊的成分分析法の開発」による成果です。
図表1 212755-1.gif
図表2 212755-2.gif
図表3 212755-3.jpg
カテゴリ 乾燥

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