タイトル | 木質ペレットの燃えやすさを見極める |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
吉田 貴紘 上川 大輔 黒田 克史 久保 智史 井上 真理子 |
発行年度 | 2009 |
要約 | 地球環境に優しい木質バイオマス燃料として木質ペレットが注目されています。コーンカロリーメーターという装置を用いることで、木質ペレットの品質と燃えやすさとの関わりを見極められることがわかりました。 |
背景・ねらい | 木材(木質バイオマス)は、燃やして出る二酸化炭素を木を植えることにより吸収できるので、地球環境に優しいエネルギー源として注目されています。木質ペレット(写真1)はおがくずなどを小さな円柱状に圧縮して固めた燃料です。取り扱いが簡単なことから、暖房(ストーブ)や給湯(ボイラー)用として使われ始め、生産量はこの4年間で10倍に増えま した。しかし流通している木質ペレットには「固くて燃えにくい」ものもあり、品質改善が必要です。そこで「コーンカロリーメーター」とよばれる装置で調べることで、木質ペレット品質と燃えやすさとの関わりを見極められることがわかりました。 |
成果の内容・特徴 | コーンカロリーメーターとは写真2にコーンカロリーメーターを示します。この右側中央に円すい状のヒーターがあり、試料を上から強力に加熱させながら燃やしていきます。物が燃えるときに酸素が消費されますが、この消費された酸素の量を測定して燃えるときの熱の発生の様子(発熱速度)を調べます。普段は建築材料の「燃えにくさ」を調べる(火災を防ぐ)ために使われていますが、今回は木質ペレットの「燃えやすさ」を調べるために用いました。木質ペレットは原料とする木の部分により、木の皮(樹皮)を原料とする樹皮ペレット、樹皮を取り除いた部分を原料とする木部ペレット、両方が混ざる全木ペレットに分類されます。本研究では品質の異なる樹皮、木部、全木ペレットを用意し、測定方法を工夫しながら燃え方を調べた結果、木質ペレットの品質と燃え方との関係がわかりました。木質ペレットの燃え方図1に加熱開始から完全に燃え尽きるまでのスギの樹皮ペレット、木部ペレットの燃え方を示します。加熱開始後35秒から70秒で火がつき(着火)、炎を出して燃えます(有炎燃焼)。その後5分程度で炎が消え、数十分間赤くなりながら燃え続け(炭が燃える状態、無炎燃焼)、最後には燃え尽きて灰となります。この図では燃えている間に出る熱の量(発熱量)の変化も示しています。有炎燃焼の間は発熱速度が大きく、無炎燃焼になってからはだんだん小さくなっていくのがわかります。また木部ペレットでは樹皮ペレットに比べて有炎燃焼時の発熱速度が大きいことも分かります。木質ペレットの品質と燃え方の関係図2に火がつく時間(着火時間)と熱慣性との関係を示します。熱慣性とは物の温まりにくさを表す値で、密度(体積当たりの重さ)と比例します。ペレットの密度が高いことはペレットが固いことを意味します。図で示すように熱慣性が大きいほど着火時間が長くなる傾向がわかります。すなわち密度が高い(=固いペレット)ほど燃え始めが遅い(=燃えにくい)ことがわかりました。次に原料の違いを比べてみました。図3は有炎燃焼期間に出る発熱量の割合を示したものです。図1の結果からも予想できるように、この期間の発熱量はスギ樹皮では他に比べて小さいことがわかります。一方、図1右側の総発熱量の結果が示すように、完全に燃え尽きた後の発熱量は原料にかかわらずほぼ同じでした。すなわち最後まで燃やしたときのエネルギーは同じでも、途中の燃え方が異なる場合があることがわかります。 このようにコーンカロリーメーターを用いることで木質ペレットの燃え方が詳しくわかり、燃えやすいペレットを見極められることがわかりました。今後はこの方法を利用して、木質ペレットの品質改善に貢献する可能性があります。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
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