タイトル | ノシバおよびバミュ−ダグラスに発生した新病害、「褐条葉枯病」(新称) |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 花き研究所 |
研究期間 | 2004~2008 |
研究担当者 |
伊藤陽子 吉田重信(農環研) 月星隆雄 鍾 文鑫 (農環研) |
発行年度 | 2004 |
要約 | 栃木、山梨、沖縄の各県でノシバおよびバミューダグラスに発生した葉枯症状を新病害、褐条葉枯病とした。病原菌はBipolaris heveaeであったが、相互交配により初めて有性世代を形成したことから、新種Cochliobolus heveicolaとして記載した。 |
背景・ねらい | ノシバおよびバミューダグラスは緑被作物として重要な作目である。病害としては白枯病などがあるが、1990年代から栃木、山梨、沖縄の各県で原因不明の葉枯性病害が発生し、有効な薬剤もなく、ゴルフ場等では対策に苦慮していた。そこで、この症状の病原を明らかにし、有効な対策をとる上での基礎とすることを目的とした。 |
成果の内容・特徴 | 1. ノシバでは1994~2001年にかけて栃木県西那須野町、山梨県川口湖町のゴルフ場で、バミューダグラスでは2002年に沖縄県石垣市の草地で春または秋に発生した。病徴は葉身に暗褐色、長さ2-5mm、幅0.5-1mm程度の条斑を形成する(図1A)。多発すると葉は黄化・枯死し、ゴルフ場では不定形パッチ症状を示す(図1B)。 2. 分離菌は長紡錘形の分生胞子を屈曲した分生子柄の先端付近に数個形成した(図1C)。分生胞子は暗オリーブ色、大きさ77-131×11-17μm、8-13個の偽隔壁をもち、へそは突出せず、生育適温は25℃付近であった。以上の形態はゴムノキの病原菌であるBipolaris heveaeの原記載および標準菌株(ゴムノキ菌)の形態と一致した。 3. 分離菌のrDNA ITS領域の塩基配列を解析した結果、塩基配列データバンクのB. heveaeと99%の相同性があった。以上の形態的特徴および分子系統解析により、本菌をBipolaris heveae (Petch) Arx emend Muchovej & R. Muchovejと同定した。 4. 本菌は分離宿主に明瞭な病原性を示し、病徴を再現した(図1B、表1)。バミューダグラス菌およびゴムノキ菌はノシバには病原性を示さず、病原性差異が認められた。以上から本病をノシバおよびバミューダグラスの褐条葉枯病(新称、英名Borwn stripe)として報告した。 5. 本菌の有性世代は未詳であったが、供試菌株を相互に交配した結果、ノシバ菌×バミューダグラス菌等の組合せで初めて有性世代を形成した(図2)。偽子のう殻は黒色、亜球形、殻口をもち、無色、円柱形の子のうが充満した。子のう内には無色、糸状、大きさ155-208×8-10μm、5-9隔壁の子のう胞子が1-8本、らせん状に固く巻いて形成された。本菌の有性世代をCochliobolus heveicola sp. nov.として、新種記載した。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本病はバミューダグラス白枯病(Bipolaris cynodontis)と同属の病原菌によるものだが、明瞭な褐条斑を形成し、病斑が白く抜けることはないことなどから区別できる。 2. 本病は春、秋の比較的気温の低い季節に発生するが、詳しい生態は不明である。防除のため、今後有効薬剤等を明らかにする必要がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 病害虫 オリーブ 防除 薬剤 |