タイトル |
破断試験によるブドウ肉質の客観的評価法 |
担当機関 |
果樹試験場 |
研究期間 |
1996~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
これまで官能によるしか評価方法がなかったブドウの肉質について破断試験による客観的評価法を開発し、得られた測定値を用いて肉質の種間・品種間差異を明らかにした。
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背景・ねらい |
ブドウ果実においては、糖、酸、香気などとともに肉質も食味を決定する上で非常に重要な要素である。ブドウの肉質には種間・品種間差異が大きく、「キャンベルアーリー」など米国系品種の肉質より「マスカット・オブ・アレキサンドリア」など欧州系品種の肉質の方が、欧州系品種群内においては軟らかいものより硬いものの方が肉質がよいとされる。現在、肉質の評価は官能によってのみ行われており、硬さを除いて器械的測定による客観的評価法は確立されていない。望ましい肉質を持つ品種を効率的に育成するためには、肉質の客観的測定法を開発し、遺伝解析を行うことが不可欠である。 そこで、ブドウの肉質の客観的測定法を開発するとともに、肉質の種間・品種間差異とその特徴を明らかにした。
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成果の内容・特徴 |
- 厚さを調整したブドウ果肉の横断面の試料に円筒形のプランジャー(直径3㎜)を貫入させる破断試験を行う。X軸を果肉内のプランジャーの貫入距離(変形)、Y軸をプランジャーの果肉への貫入に伴う抵抗(力)として、破断に伴う波形を記録紙上に記録させる。この力-変形曲線から、最初の破断までの変形量(以下、変形量とする)と最大破断力を読みとる。変形量は官能による果肉の噛み切れにくさ(果肉特性)と、最大破断力は官能による果肉の硬さ(果肉硬度)とそれぞれ相関が高い(表1)。したがって、従来官能によってのみ評価されてきた果肉特性と果肉硬度は、変形量と最大破断力を用いて客観的に表すことができる。
- 欧州系品種群においては、変形量は小さいものばかりで変異も小さい(図1)。一方、米国系品種群においては変形量が小さいものから大きなものまであり、変異の幅が大きい。最大破断力については、両品種群間で変異の差はない。諸外国においてブドウの肉質を表現するために使われる、tough、tender、crispなどの用語についても、最初の破断までの変形量と最大破断力の2要因によって説明することができる。
- 変形量、最大破断力ともに、樹間の変異、果房間の変異が小さく、果房内の変異が大きい。したがって、これらの形質の遺伝的特性をとらえるためには、樹の反復や同一樹内の果房の反復を増やすよりも、同一果房内の果粒の反復を増やした方がよい。
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成果の活用面・留意点 |
- 変形量、最大破断力ともに果房の熟度によって変動するので、品種の遺伝的特性をとらえるためには、完熟した果房を用いるように留意する必要がある。
- 品種間差異ばかりでなく、様々な環境条件や栽培管理法が肉質に及ぼす影響も本法によって評価できる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
栽培技術
シカ
評価法
品種
ぶどう
良食味
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