タイトル |
ニホンナシ園の日別蒸発散量とその気象データによる推定 |
担当機関 |
果樹試験場 |
研究期間 |
1997~1999 |
研究担当者 |
伊藤大雄
杉浦俊彦
黒田治之
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発行年度 |
1997 |
要約 |
平棚仕立てニホンナシ園の1日当たり蒸発散量を、茨城県において2つの方法で測定したところ、春季と秋季は平均2~3mm、夏季は3~4mmであった。これは、気象データから計算されるペンマン蒸発散位の62~82%に相当する。
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背景・ねらい |
ニホンナシの栽培においては、圃場が水不足に陥ると光合成機能が低下して収量の減少を招く反面、過湿状態になると直ちに果実の糖度が低下するので、適切な水管理が大切である。そのため、圃場から失われる水の量を日々推定し、常に圃場の水分動態を把握して、灌漑などの水管理計画に活用する技術が求められている。本研究では、ニホンナシ園から蒸発散によって失われる水の量を明らかにした上で、蒸発散量を気象データから日々推定する方法を検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 果樹試験場において、平棚仕立てニホンナシ成木園(草生)の蒸発散量を、微気象学的方法(熱収支法)により推定した。その結果、1日当たりの蒸発散量は、春季と秋季には平均2~3mm、夏季には3~4mmであった(表1)。
- 上記圃場の地下0~120cmの土壌水分含量を毎日測定し、その水分減少量からも蒸発散量を推定した。その結果、熱収支法と同程度か、若干小さな値が得られた(表1)。若干小さな値が得られた理由としては、ニホンナシの根が120cm以深から吸収する水が評価されないことが考えられる。
- 熱収支法で求めた日別蒸発散量は、いずれの生育時期にも、気象データ(純放射量、気温、湿度及び風速)から常法により計算した蒸発散量(ペンマン蒸発散位)と密接な比例関係があり、比例係数は0.62~0.82であった(表2、図1)。すなわち、日々の一般気象データをもとにペンマン蒸発散位を計算し、これに0.62~0.82を乗ずれば、ニホンナシ園の日別蒸発散量が推定できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 日別推定蒸発散量を活用して、更に土壌の有効水分量や水分張力の変動を推定することが可能になり、水管理計画の改善に役立つ。
- 7~8月の蒸発散量は、水ストレス下では上記の値を下回ると考えられる。
- ペンマン蒸発散位の計算に必要な気象データのうち、純放射量は一般に入手困難であるが、日射量等から推定することができる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
水管理
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