タイトル |
早熟で食味が良く食べやすいミカン新品種候補「カンキツ興津 54 号」 |
担当機関 |
果樹試験場 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
伊藤祐司
吉岡照高
吉田俊雄
根角博久
村瀬昭治
瀧下文孝
中野睦子
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発行年度 |
2000 |
要約 |
ミカン新品種候補「カンキツ興津 54 号」は、「E- 647」に「宮川早生」を交雑して育成したミカンである。オレンジ様の風味があり良食味である。皮むきがし易く、じょうのう膜が薄く、種子が少なく食べやすい。成熟期が 12 月上旬で早熟性であり、年内販売が可能である。
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背景・ねらい |
ウンシュウミカンの需要減退により、早熟の高品質ミカン品種の育成が望まれている。そこで、早熟で果実品質が良いが、やや小果でやや剥皮しにくく、有核の「E- 647」(「清見」×「オセオラ」)を種子親に、早熟で剥皮しやすく無核であるが、風味に乏しい「宮川早生」を花粉親にして交配を行い、早熟で食味が良く、食べやすい、ミカンタイプの品種育成を図った。
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成果の内容・特徴 |
- 1990 年(平成2年)に果樹試験場興津支場(現カンキツ部興津)において、「E- 647」に「宮川早生」を交雑して育成した系統である。1992 年(平成4年)にウンシュウミカンに高接ぎ、1995 年(平成7年)に初結実し、一次選抜した。1996 年(平成8年)4月よりカンキツ第8回系統適応性・特性検定試験を実施し、新品種候補にふさわしいとの合意が得られた。
- 果実は扁球形で平均 180g外である。果皮は橙色、厚さ4mm外で、ミカンタイプとしてはやや厚いが、柔らかく、剥皮は容易である。果面はやや滑らかで 12 月上旬~中旬に完全着色する。浮き皮はほとんど発生しない。果肉は橙色で比較的柔らかく、果汁量はやや多い。じょうのう膜は比較的薄く柔らかいので食べやすい。果汁の糖度は10%外で比較的低いが、減酸が早く、オレンジ様の風味があり食味は良好である。成熟期は 12 月上旬で、普通温州程度に早熟であり、年内の収穫、出荷が可能である。葯が退化し、花粉が無いので他品種の花粉がかからなければ無核である(表1、図1)。
- 樹勢は中庸で、樹姿は直立性と開張性の中間である。枝梢は太く、短く、密生する。とげが多いが短くなってきており、樹勢が落ち着けば発生しなくなると考えられる。結実性は良好である。そうか病にはかなり強いが、かいよう病に対してはやや罹病性である。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生は軽度である。
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成果の活用面・留意点 |
- 果実は風味が良く、食べやすいが、果汁の糖度が比較的低く、食味が淡白になりやすいので、カンキツ栽培地帯の中で、秋季に降雨が少ない地域での栽培に適する。水田転換園のような土壌水分が多くなりやすい所での栽培は避ける。夏秋季に土壌水分をコントロールし、樹体に水分ストレスがかかるような条件での栽培が望ましい。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
温州みかん
出荷調整
新品種
水田転換園
高接ぎ
品種
良食味
その他のかんきつ
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