タイトル |
暖房・換気交互制御による加温施設内オウトウの裂果防止装置 |
担当機関 |
果樹試験場 |
研究期間 |
1995~1999 |
研究担当者 |
杉浦俊彦
伊藤大雄
黒田治之
工藤 信
野口協一
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発行年度 |
2001 |
要約 |
オウトウの加温施設内での裂果は、曇天・雨天日における蒸散の低下と早朝の果実面結露に原因がある。自動的に暖房と換気を交互に反復して高温低湿条件を保つことにより蒸散を促進し結露を防ぐ、裂果防止のための環境制御装置を開発した。
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キーワード |
オウトウ、施設栽培、裂果、除湿、蒸散、環境制御、結露
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背景・ねらい |
オウトウの加温施設による促成栽培は収益性が高く、栽培面積が年々、増加しているが、曇天や降雨が続くと激しい裂果が発生し大きな問題となっている。露地栽培における裂果は降水で濡れることが主な原因であることが明らかにされているが、直接、雨水に濡れることのない施設内で裂果が発生する原因は明確ではない。そこで、その原因を明らかにし、それを基に加温施設における裂果防止のための環境制御装置を開発した。
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成果の内容・特徴 |
- オウトウ「佐藤錦」の果実にレーザー変位計を設置し果実の肥大、収縮の日変化を計測すると晴天日は日中にいったん収縮し、主に夜間、肥大するのに対し、日射量の少ない曇・雨天では昼夜を問わず肥大する(図1)。
- 上記の試験等の結果から、オウトウ果実は曇天・雨天日のような施設内で蒸散しにくい条件下で、急速に果実肥大し果皮組織の生長が追いつかず、この状態が長引くほど裂果しやすくなると推察される。
- オウトウ「佐藤錦」が栽培されている施設内において、気温、露点温度、果実表面温度を計測し、果実表面の飽差を求めた結果、果実表面に結露が発生することが示唆され、かつ裂果調査により結露が発生しやすい日ほど翌朝の裂果率が高まることを明らかにした。このことは夜間から早朝の湿度制御による結露防止も裂果防止に効果があることを示す。
- 裂果が発生しやすい曇天・雨天日に暖房・換気交互制御を行えば、施設内環境を高い蒸散速度が維持できる高温低湿条件に制御できることが示され(図2)、暖房機、側窓開閉装置、温湿度センサを組み合わせた樹体蒸散制御装置を考案した。制御はマイコンで行い、アルゴリズムを図3に示す。この装置は同時に夜間の結露防止も可能である。
- 環境制御を行った場合の裂果率は1.7%で、対照区の14.2%に比べ大きく低下した。
- 曇天・雨天日のオウトウの蒸散速度は、晴天日の10~15%であったが、蒸散を促進する環境制御(湿度50~70%、気温20~25℃)により、晴天日の60~75%が確保できた。
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成果の活用面・留意点 |
- 環境制御は裂果する可能性が高まる満開後1カ月以降に行う。
- 環境制御を効率よくおこなうため、地表面マルチにより土壌からの蒸発防止を同時に行う必要がある。
- うるみ果が発生する場合があるので、気温が25℃以上にならないよう注意する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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カテゴリ |
おうとう
環境制御
施設栽培
裂果防止
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