タイトル | 抗IAA一本鎖抗体の大腸菌での発現とその特性 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所 |
研究期間 | 1998~2000 |
研究担当者 |
三谷宣仁 松本亮司 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 抗IAAモノクローナル抗体を産生する細胞から、抗体のL鎖及びH鎖の可変領域をコードする遺伝子を単離し、両鎖の遺伝子から一本鎖抗体をコードする遺伝子を構築し大腸菌で発現させた場合、もとのモノクローナル抗体と同程度の結合活性を有している。 |
キーワード | オ-キシン、一本鎖抗体、ELISA |
背景・ねらい | IAAをはじめとするオ-キシンは、細胞伸長、発根、離層形成といった植物の生理作用に深く関わっており、さらに果樹においてはオ-キシンと着果・落果の現象との関係について多く調べられている。IAAを特異的に認識する抗体を調製した後この抗体をコ-ドする遺伝子を植物に組み込み発現させれば、内生IAA量を人為的に制御することが可能であり、IAAの作用機作がより明らかになると考えられる。植物体内で抗体タンパク質を発現させる方法はいくつか考えられるが、抗体のL鎖H鎖それぞれの可変領域をつないだ一本鎖抗体を発現させる方法が簡便であるため、ここでは一本鎖抗体の遺伝子を構築して大腸菌で発現させ、植物体内に組み込む前にその特性の検討を行った。 |
成果の内容・特徴 | 1. 抗体産生用の抗原としてIAAのインドール環上の窒素にウシ血清アルブミンを結合させたものを免疫した場合、得られるモノクローナル抗体を用いたELISAでのIAAについての定量範囲は10fmolから10pmolである(図1)。また既に報告されている、IAAのインドール環上の窒素にタンパク質を結合させて調製した抗体と比較すると、indole-3-acetyl glycineやindole-3-acetamideといったIAA誘導体に対する交差反応性が低くなっており、IAAや1-NAAなどの遊離のカルボキシル基をもつオ-キシンに対する特異性が高まっている(表1)。 2. 抗体産生細胞から抗体のL鎖及びH鎖の可変領域をコードする遺伝子を単離し、一本鎖抗体をグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として大腸菌において発現させた。この融合タンパク質は不溶性画分に含まれるが、尿素添加によって変性しその後尿素を除くと可溶性画分に含まれる(図2)。アフィニティークロマトグラフィー及びトロンビン処理によりGSTを除去した一本鎖抗体として精製することができる。 3. 得られた一本鎖抗体を用いたELISAでは、IAAについての定量範囲は10fmolから10pmolであり、もとのモノクローナル抗体と同程度である(図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 得られたモノクロ-ナル抗体は遊離型のカルボキシル基をもつオ-キシンの分析に有効である。このモノクロ-ナル抗体と同程度の特性を有する一本鎖抗体は、一本鎖抗体を発現する大腸菌がモノクロ-ナル抗体を産生する抗体産生細胞よりも扱いが容易であり、オ-キシン定量のコストダウンが可能である。 2. 抗IAA一本鎖抗体の遺伝子を植物体内に導入して発現させることにより、内生オーキシン量を人為的に制御できる可能性がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | コスト |