タイトル | リンゴからのスペルミン合成酵素遺伝子の単離と発現解析 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所 |
研究期間 | 2001~2005 |
研究担当者 |
森口卓哉 北柴大泰 本多親子 |
発行年度 | 2005 |
要約 | リンゴにはポリアミン合成酵素遺伝子の一つであるスペルミン合成酵素遺伝子が2タイプ(ACL5タイプとSPMSタイプ)存在する。新鮮重当たりのスペルミン含量は果実分裂期に最大となる。ACL5タイプは果実の細胞分裂期に、SPMSタイプは果実肥大初期と成熟期に発現が多い。 |
キーワード | リンゴ、ポリアミン、スペルミン、ACL5、SPMS、果実発育 |
背景・ねらい | スペルミンを初めとするポリアミンは、植物の細胞分裂,形態形成、ストレス反応などの様々な生理作用に関与している。しかし、果樹におけるポリアミンの機能については不明な点が多い。そこで、シロイヌナズナのわい化突然変異体(acl5 )の原因遺伝子であるACL5 と、塩基配列がそれとは全く異なるAtSPMS2種類のスペルミン合成酵素遺伝子(図1)ホモログをリンゴから単離し、その発現解析を行うことにより果実発育過程に関わるそれぞれのスペルミン合成酵素遺伝子の機能を解明する。 |
成果の内容・特徴 | 1. リンゴ「王林」にはACL5タイプとして少なくとも2種類(MdACL5-1, MdACL5-2 )、SPMSタイプとして少なくとも1種類(MdSPMS )の遺伝子が存在する(図2)。 2. 単離した遺伝子を酵母のスペルミン合成酵素欠失変異体やシロイヌナズナのacl5 わい化変異体に導入すると、スペルミン合成能やわい化形質が補完されることから、MdACL5 とMdSPMS はともにスペルミン生合成を触媒する機能を持つ遺伝子である。 3. MdACL5発現レベルは果実細胞分裂期で最大となる。若葉、花芽でもその発現が認められるが、成熟した葉や果実では低い(図3a)。 4. MdSPMS発現レベルは果実肥大初期と成熟期の2つの時期で最大となる。果実肥大の中期や成熟した葉では比較的低いレベルで推移する(図3a)。 5. 新鮮重当たりのスペルミン含量は果実細胞分裂期に最大となり、肥大初期には激減し、その後は収穫期までそのレベルを保つ。このパターンはMdACL5発現パターンと対応する(図3b)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本研究の成果はリンゴの果実発育において、MdACL5 は果実細胞分裂と、MdSPMSは初期の果実肥大および成熟との関わり深いことを示唆しており、果実発育におけるポリアミンの役割解明に重要な情報として活用できる。 2. 果実発育過程におけるMdSPMS 遺伝子発現と新鮮重当たりのスペルミン含量との関係に相関がみられない理由についてはさらに解析が必要である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | りんご わい化 |