タイトル | クリ害虫の微生物防除資材としてBeauveria bassiana HF338株は有望である |
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担当機関 | (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 | 2001~2008 |
研究担当者 |
栁沼勝彦 井原史雄 外山昌敏 三代浩二 檜垣守男 |
発行年度 | 2008 |
要約 | クリシギゾウムシ幼虫に対する高い病原力を指標として選抜した昆虫病原糸状菌Beauveria bassiana HF338株は、クリシギゾウムシ成虫およびクリミガ幼虫に対しても強い病原力を有し生物防除資材として有望である。 |
キーワード | クリ、昆虫病原糸状菌、微生物防除、クリシギゾウムシ、クリミガ |
背景・ねらい | クリシギゾウムシとクリミガはクリの重要害虫であり、従来、本害虫の防除は収穫後の果実を臭化メチルでくん蒸することで対応されてきた。しかしながら臭化メチルはオゾン層の破壊物質として使用が制限され、クリでは不可欠用途としての利用が認められているのが現状で、臭化メチルは全廃の方向にあり、代替防除技術の開発が急務である。収穫後の防除技術としてヨウ化メチル等を利用した代替技術が検討されているが、栽培期間中における防除は薬剤散布しか無く、近年の環境や食の安全・安心に対する国民意識の高まりに応えられていない。そのため、環境保全型の農業技術に資する昆虫病原糸状菌を利用したクリ害虫防除技術の開発をめざす。 |
成果の内容・特徴 | 1.日本各地の野外死亡虫から分離・培養した昆虫病原糸状菌、Beauveria 属77菌株をクリシギゾウムシ幼虫に処理したとき、B. bassiana HF338株は最も強い病原力を示し、1×106 分生子/幼虫の条件では7日以内に死亡率はほぼ100%に達する。 2.B. bassiana HF338株の病原力は、クリシギゾウムシ幼虫を2ml容カップに入れ、分生子懸濁液と接触させたとき、半数致死量(LD50)は2,700 分生子/幼虫で、高濃度の分生子懸濁液(1×106 分生子/幼虫)を用いた場合の半数致死時間(LT50)は4.5日であり、強い(表1)。 3.B. bassiana HF338株はクリシギゾウムシ幼虫に低い温度(15℃)で感染試験を行っても、LT50値は長くなるが、LD50値には影響せず、強い病原力を維持する(表1)。 4.クリシギゾウムシ成虫をB. bassiana HF338株分生子懸濁液に浸漬する方法で接種したときの半数致死濃度(LC50)は2.6×105 分生子/mlであり(表2)、1×108 分生子/mlで成虫を処理したとき、死亡率は10日以内にほぼ100%に達する。 5.クリミガ幼虫をB. bassiana HF338株の分生子懸濁液に浸漬する方法で接種したときのLD50値は3.5×105 分生子/mlであり、クリシギゾウムシ成虫に対する病原力と同等の病原力である(表3)。1×108 分生子/mlでクリミガ幼虫を処理したときにも10日以内にほぼ100%の死亡率に達する。 |
成果の活用面・留意点 | 1.B. bassiana HF338株はクリシギゾウムシとクリミガ幼虫の防除に利用できる可能性があるが、屋外での施用方法を検討する必要がある。 2.B. bassiana HF338株は15℃の低温でも、クリシギゾウムシ幼虫に強い病原力を維持することから、越冬中の幼虫に対する防除効果が期待できる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 害虫 くり シカ 防除 薬剤 |