てんさい直播栽培技術の収益性と十勝地域における導入条件

タイトル てんさい直播栽培技術の収益性と十勝地域における導入条件
担当機関 十勝農試
研究期間 1999~2001
研究担当者 平石学
有田敬俊
山田誠司(北見農試)
発行年度 2002
要約 てんさい直播栽培の収益性は移植栽培より低いため、基本的には、移植から直播へ転換すると所得は低下する。しかし、移植収量が低く、かつ労働力の少ない経営群のうち、(1)小規模経営で全面直播栽培をおこなう場合や、(2)大規模経営で移植と直播の併用をおこなう場合には、投資節減によって導入効果が生じる。
キーワード てんさい直播栽培、低収発生頻度、畑作経営、投資節減
背景・ねらい てんさい直播栽培は、多労的な移植栽培に替わりうる省力低コスト技術として期待されている。そこで本研究では、直播栽培の収益性を明らかにするとともに、直播栽培を採用することによって収益が改善する営農条件を明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 主要てんさい作地域(十勝・網走・道央)における実態調査と機関調査に基づき、てんさい直播栽培の収益性を試算した。
    1. 移植と直播の収量格差は実態で1.0t/10a(17.4%)と判断される。また、直播は低収(地域平均収量の70%未満)発生頻度が高く、低収発生頻度の地域間差は大きい(表1)。
    2. 直播の経営費(減価償却費を除く)は移植に比較し8,217円少ない。これは基準糖分のてんさい500kg程度に相当する。したがって、直播の所得を移植より高めるために許容される収量格差500kg/10a以内が目標となる。
    3. てんさいの農業所得(減価償却費控除前)の試算によると、直播は移植より8~21千円/10a低いことが見込まれる。収量水準が低い地帯ほど、直播と移植の所得格差は小さい(図1)。
    4. てんさい1t当たり生産費(償却費を除き労働費を含む)の試算によると、移植収量5.5t/10a以下の地帯では、直播における1t当たり生産費は移植より低い(図1)。
    以上のことから、移植収量の低い地帯ほど直播の効果が認められるが、そうした地帯では低収発生頻度の高さが直播定着の阻害要因となっている。
  2. 直播栽培の採用方法に関するアンケート調査および実態調査から、十勝地域において導入効果が期待される経営の2パターンが明らかとなった。
    1. 小規模少労働経営:全面直播による軽労化と移植関連投資の抑制
    2. 大規模作付:移植と直播の併用による全自動移植機への投資節減と作付拡大
  3. てんさい小規模作付を想定した試算によると、てんさい作付規模が2ha程度以下の経営では、全面直播の採用によって機械投資が節減でき、農業所得が向上する(表2)。
  4. 十勝周辺部(てんさい移植収量5.3t)における現状程度の直播の低収頻度を前提とした試算によると、夫婦のみで雇用確保が困難な経営では、耕地規模40~45haを除けば、移植のみと移植と直播の併用との所得格差はわずかである。また、低収が解消すると、50ha以上では全面直播で所得向上が見込まれる(図2左)。すなわち、従来型移植機で作付拡大が困難となるてんさい作付規模8ha以上では、直播を併用して作付を拡大することで、全自動移植機を導入した場合と遜色ない所得が達成されるとともに軽労化が計られる。さらに併用の経験を経ることにより、直播収量の安定化が可能となれば、全面直播の有利性も生じてくる。一方、労働力の豊富な経営(図2右)や単収の高い十勝中央部では、直播による農業所得向上効果は小さい。
成果の活用面・留意点
  1. てんさい直播栽培を導入する際の指標となる。
図表1 213353-1.gif
図表2 213353-2.gif
図表3 213353-3.gif
図表4 213353-4.gif
カテゴリ 経営管理 軽労化 直播栽培 大規模経営 低コスト てんさい

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