タイトル |
複合型発酵槽を用いた個別利用型バイオガスプラント |
担当機関 |
根釧農試 |
研究期間 |
2003~2004 |
研究担当者 |
関口建二
高橋圭二
大越安吾
木村義彰
|
発行年度 |
2004 |
要約 |
本施設は発酵槽と貯留槽が一体の密閉構造で、貯留期間中もメタンや悪臭などの放出を抑制できる。処理後のふん尿は粘度や臭気強度が低下し、雑草種子は死滅する。液肥化に必要な最小限の施設構成のため導入コストは既存施設比で3~4割低減可能である。
|
キーワード |
メタン発酵、乳牛ふん尿スラリー、液肥化、地球温暖化ガス
|
背景・ねらい |
ふん尿のメタン発酵処理は他の処理方法に比べメタンなど地球温暖化ガスの放出が少ないなど、環境負荷が少なく、熱や電気の供給源としても注目されている。しかし建設コストの高さや、エネルギー供給によるコスト回収の利点が少ないことが課題となっている。 本施設の開発目標は個別利用型のバイオガスプラントとして、乳牛ふん尿の液肥化に必要な最小限の施設構成と機器装備の絞り込みによって低コスト化を図ること、および処理後の消化液の貯留期間も含めて、ふん尿処理に伴う環境負荷を減らすこととした。
|
成果の内容・特徴 |
- 本施設は鉄筋コンクリート製の連続式発酵槽と発酵槽を兼ねる貯留槽(以下、貯留式発酵槽と呼ぶ)を一体構造としたメタン発酵処理施設である。二つの発酵槽は密閉されているため、発酵処理後の貯留期間も含めて、外部へのメタンや悪臭の放出が少ない。
- 原料の乳牛ふん尿スラリーはポンプで連続式発酵槽に1日3m3投入され、42℃に加温し発酵される。貯留式発酵槽では発酵温度が20℃以上の設定で、連続式発酵槽から流入する処理液を散布まで発酵させつつ貯留する(図1)。生成したバイオガスは酸化鉄資材による硫化水素の除去後、発酵槽加温用ガスボイラの燃料として利用する。
- 発酵槽内の撹拌は原料投入時の流動とスラリータンカーの吐出力で行うことにより、液面のスカムや配管閉塞の原因となる沈殿は生成しない。
- 本施設は冬期間でも運転開始時の発酵槽立ち上げ操作が可能である。定常運転中は1年を通じてバイオガスのみで発酵槽を設定温度に保持できる(図2)。
- 本施設のメタン発酵処理によってふん尿中の有機物濃度やプロピオン酸などの悪臭成分は減少し、粘度や臭気強度が低下する(表1)。雑草種子は42℃の発酵温度で死滅する。
- 定常運転時の維持管理費としてポンプや制御機器類の電気代と脱硫資材の交換費用などが必要で、総額は1年間でおよそ30万円である。
- 搾乳牛50頭のふん尿処理を想定した本施設の総工事費は3576万円となった。想定飼養頭数を100頭とした場合の総工事費試算額は約5500万円で、発電設備を備えた同規模の既存施設に比べ総工事費は3~4割低減可能である(表2)。本施設の建設にあたって特殊工法などは必要なく、施工は大手の総合建設会社に限らず、道内各地の建設会社で対応が可能である。
|
成果の活用面・留意点 |
- 100頭程度の規模までに対応する低コストな環境保全型ふん尿処理法として活用できる。
- 敷料におがくずを用いた乳牛ふん尿スラリーの処理に利用できる。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「複合型発酵槽を用いた個別利用型バイオガスプラント」(普及奨励)
|
図表1 |
|
カテゴリ |
病害虫
コスト
雑草
低コスト
乳牛
|