タイトル | 北海道におけるアカクローバの花粉移動距離の推定と訪花蜂の種類 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2004~2005 |
研究担当者 |
奥村健治 磯部祥子 |
発行年度 | 2005 |
要約 | アカクローバの花粉移動は集団間の交雑調査の結果から400m付近でも認められる。受粉を媒介すると考えられる訪花蜂はマルハナバチ類、ヒメハナバチ類、ハイイロヒゲナガハナバチ、コハナバチ類およびセイヨウミツバチである。 |
キーワード | アカクローバ、虫媒植物、花粉移動、受粉媒介昆虫、クローバ類 |
背景・ねらい | アカクローバは北海道の草地において最も広く栽培されているマメ科牧草である。現在、海外ではクローバ類のウイルス病抵抗性を中心に遺伝子組換え技術による永続性の改良が進められている。クローバ類は、道内では草地を含め路傍等でも普通にみられる植物であることから、組換え遺伝子の拡散は生態系に大きな影響を与える可能性がある。そこで本研究ではアカクローバを中心とする生態系への影響の知見を蓄積するため花粉の移動距離の推定と受粉媒介可能な昆虫の種類の特定を行う。 |
成果の内容・特徴 | 1.アカクローバの花粉移動距離の推定は、葉斑形成(優性遺伝子)をホモにもつドナー集団に対して無葉斑(劣性ホモ)のレシピエント集団を21m、131m、262mおよび392mに配置し、訪花蜂については採種や養蜂に利用されているセイヨウミツバチを設置した場合と野生蜂のみの2種類、1週間程度の放任受粉後のレシピエント集団の後代個体の葉斑の出現による(表1)。 2.葉斑形成個体の出現頻度は距離の増大とともに著しく低下するが、392mの地点でも0.8%の出現がみられる。また、セイヨウミツバチの設置による違いは認められない(表1、図)。 3.アカクローバ(Trifolium pratense)、シロクローバ(T. repens)およびクローバ類の属するシャジクソウ属(Trifolium 属)のなかでわが国に唯一自生するシャジクソウ(T. lupinaster)の訪花蜂の種類は道東、道央、道南の3地域の採集の結果、15種である(表2)。 4.15種はマルハナバチ類、ヒメハナバチ類、ハイイロヒゲナガハナバチ、コハナバチ類およびセイヨウミツバチの5グループに群別でき、種別ではニセハイイロマルハナバチは3地域、またシロクローバ、アカクローバおよびシャジクソウすべてで採集され、合計81頭、全採集数の40%を占める(表2)。 5.大型のマルハナバチ類はアカクローバに、セイヨウミツバチはシロクローバで多く訪花が見られ、蜂種とクローバ種の間に特異的な傾向がみられる(表2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.今回の花粉移動距離は2005年7月下旬から8月上旬の札幌の結果であり、虫媒花の花粉移動距離は地域による訪花昆虫の種類、季節、年次の変動が大きいことに留意する。 2.訪花蜂の種類はクローバ類の組換え体が栽培あるいは侵入した場合に受粉に関与する昆虫の参考リストとして活用する。 3.個々の蜂の種類と花粉移動距離ならびに受粉効率との関係は明らかにされていない。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 受粉 抵抗性 マルハナバチ ミツバチ |