タイトル | 乳牛の初産分娩月齢早期化は乳生産性と繁殖性を低下させない |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2003~2007 |
研究担当者 |
高橋正樹(富山県) 高橋芳幸(北大) 坂口 実 青木真理 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 現代の育成牛では初産分娩を24ヶ月齢以降に遅くしても乳量は増えず、初産後の繁殖性は低下する。受胎時で370kg(分娩後で560kg)程度の体重があれば、授精開始を12ヶ月齢に早めても3産までの乳生産性と繁殖性に影響しない。授精開始時期の体重は、簡易体重推定器具で簡便かつ迅速に把握できる。 |
キーワード | 家畜繁殖、乳用牛、育成、初産分娩月齢、乳生産性、繁殖性、産次 |
背景・ねらい | 乳量の増加に伴い、乳牛の体格は向上してきているが、平均初産分娩月齢は26~27ヶ月とほとんど変わっていない。初産分娩を早めることにより、育成コストの削減が期待できるが、乳量の減少、繁殖性の低下あるいは初産時の難産等への危惧から、実現していない。そこで、北農研で生産された過去の育成牛について、初産分娩月齢と生産性および繁殖性について調べるとともに、現在の育成牛を用いて、12ヶ月齢からの授精開始の影響を調べる。さらに、授精開始の目安として重要な、体重を簡易推定する器具の実用性を検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1.1980年代までの育成牛では初産月齢が遅くなると、初産後の乳量も増える傾向にある。1990年代以降の育成牛では、初産月齢が24ヶ月以上では乳量に影響せず、初産後の空胎日数は、月齢が大きくなると延長する(図1)。 2.日本飼養標準にしたがい、放牧期間以外は基本的に個別給餌すると、12ヶ月齢までの平均日増体量は約890gで、体重は約370kgとなる。授精開始を12ヶ月に早めても、分娩前体重は600kgを超え、分娩後体重は560kg程度となり、初産時の分娩難易度は15ヶ月開始群と差はない。また、初産後の繁殖機能回復および3産までの分娩間隔も2群間に差はなく、早期化の影響はない(表1)。 3.授精開始を12ヶ月に早めても、3産までの産次ごとの乳量に差はない(図2)。また出生から3産搾乳終了までの、1日あたり平均乳量は12ヶ月開始群で16.6kgと、15ヶ月開始群よりも1.1kg多く、乳生産性に問題はない。 4.一人で操作できる、寛幅から体重を推定する器具(ヒポメーター)は、授精開始基準体重を含む300kg以上の階層では、体重推定尺と同等の精度を有し、測定に要する時間は約半分である。本器具は簡便かつ迅速に育成牛の体重を推定できる(表2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.乳牛の初産月齢を下げる際の目安(受胎時370kg、分娩後560kg)として活用できる。 2.季節繁殖化に必要な、24ヶ月齢以内での初産分娩を可能とする。 3.ヒポメーターは米国製の輸入品である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | コスト 乳牛 繁殖性改善 |