タイトル |
有機酪農への経営転換における生産者と関係機関の役割分担 |
担当機関 |
根釧農試 |
研究期間 |
2004~2006 |
研究担当者 |
原仁
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発行年度 |
2006 |
要約 |
有機酪農への取り組みは、解決しなければならない問題点が多く、かつ転換中の経済的負担も大きいことから、転換前から転換後を通して、生産者および関係機関、乳業メーカー等が役割分担し密接な協力体制のもと、推進することが重要である。
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キーワード |
有機酪農、有機牛乳、経営転換、役割分担
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背景・ねらい |
有機酪農は放牧飼養を前提とし、給与飼料は有機栽培されたものに限られること、予防的な動物医薬品の使用禁止など、一般的な乳牛飼養方法とは大きく異なる。北海道では、A町で農家グループが関係機関、乳業メーカーの協力を受け、有機酪農を目指して活動を始め、平成18年9月に「有機牛乳」を販売するに至っている。今後、有機酪農は国内の消費者ニーズに応える畜産生産の1つの経営形態として成長することが期待されている。 そこで、この先駆的な取り組み事例を解析することにより、有機酪農への経営転換に伴う農業所得の変動と、生産者および関係機関の役割を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 有機酪農の転換過程における問題点とその解決に向けた取組みをA町の事例に基づいて表1にまとめた。主な問題点は、飼料作では「有機粗飼料生産に伴う収量減、費用増、労働時間増」、乳牛飼養では「有機穀物飼料は価格が高く、安定的確保が不安」、経営経済面では「有機酪農への経営転換に伴う農業所得の減少」などがあげられ、関係機関および乳業メーカー等の協力体制のもと、表中に示した方法によって解決が図られた。
- 購入有機飼料費の節減および環境保全的な観点から将来展開が期待される草地型酪農地帯の放牧経営事例を対象に、有機酪農への経営転換に伴う農業所得の変動を試算した結果、飼料作の転換期では現状の所得に対し220万円のマイナス、乳牛飼養の転換期および経営転換後では2,436万円のマイナスと算出された。仮にこれを乳代の割り増しで補うと仮定した場合は、その割増率は飼料作の転換期で6.8%、乳牛飼養の転換期および経営転換後は77.2%となる(表2)。現状では有機酪農転換後は有機牛乳としての付加価値から高乳価を期待できるが、転換期間中(最低2年)は有機牛乳として販売できず付加価値を見込むことができため、特に乳牛飼養転換期において経済的負担が大きい。
- 今後、有機酪農を目指す場合は、①転換前は転換に向けた経営改善点の把握や技術導入・経営収支計画の試算、農業所得減収に係る所得補填方法等を検討する。②転換中は転換期間に係る経済的負担を軽減するため、早期に新技術を修得するとともに生産技術体系と生産工程管理方法を確立する。③転換後は生産安定とさらなるコスト低減に向けた技術改善、消費者に対する有機酪農への取り組みに係る理解促進と有機牛乳消費拡大に向けたPRをする。いずれの期間においても表3に示したように、生産者および関係機関、乳業メーカー等が役割分担し密接な協力体制のもと、推進することが重要である。
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成果の活用面・留意点 |
- 有機酪農への経営転換を目指す際に活用する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
有機栽培
有機農産物
経営管理
消費拡大
低コスト
乳牛
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