タイトル |
歩数計による乳牛の発情検出法の条件別の最適設定 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
高橋芳幸(北大)
坂口 実
青木真理
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発行年度 |
2007 |
要約 |
歩数上昇を指標とした発情検出法に最適な設定を示す。昼夜放牧およびつなぎ飼いでは肢に歩数計を装着した場合、首よりも実用性が高く、パドックではどちらも実用的である。昼夜放牧の搾乳牛では搾乳に伴う移動の影響を受け、効率、精度ともに育成牛よりも低下する。
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キーワード |
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背景・ねらい |
人工授精による牛の繁殖では、正確な発情発見作業が欠かせない。また近年の多頭化の進展や、乳量増加による乳牛繁殖性の低下を改善するためにも、省力的な発情発見法が求められている。発情発見の目的は、その後の排卵時期を大まかに予測し人工授精を適期に実施することにあるが、慣行の目視のみによる方法では、特に夜間の発情を見逃すことは避けられないため、発情の自動的な監視は繁殖性向上に有効である。そこで、牛用に開発された歩数計(牛歩、コムテック(株))による、発情検出法の最適設定を、異なる飼養環境下の育成牛において検討するとともに、昼夜放牧搾乳牛における実用性を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 首および後肢に装着された歩数計による計測値と、目視による実測歩数との関係を、昼夜(定置)放牧またはパドック飼養条件下の育成牛で見ると、後肢では飼養条件にかかわらず実測値と高い相関を示すが(r2 > 0.85, P 0.0001)、首では放牧条件下で相関が低い(r2 = 0.39, P = 0.02)。
- 直近24時間の平均歩数をそれ以前の指定した日数の平均と比較して倍率を算出し、指定倍率を超えた場合に発情と判断するシステムにおいて、発情発見の効率と精度をそれぞれ発見率と的中率で示す(図1)。両者を統合した指標として発情発見指数を用い、最大値となる条件を最適設定とする。計算方法は以下の通りである。
発見率(%)=(真の発情検出数)/(真の発情総数)×100 的中率(%)=(真の発情検出数)/(万歩計検出総数)×100 発情発見指数=発見率×的中率/100
- 搾乳作業のない育成牛における、飼養条件および装着部位別の最適設定とそのときの発見率と的中率を表1に示す。発見指数を用いた3つの飼養条件間の比較では、パドック飼養で最も効率が高く、つなぎで最も低い(図2)。装着部位別では、飼養条件にかかわらず肢での効率が高く、首への装着はパドック条件でのみ実用的なレベルである。また、前・後肢両方に装着したつなぎ条件下では、前肢の効率が若干良く、また着脱も比較的容易で、糞尿による歩数計の汚れも少ない。
- 昼夜放牧条件下の搾乳牛では、搾乳前後の放牧地-牛舎間の移動や牧区の変更の影響がみられ、発情発見指数の最高値は54(1.5倍、9-11日;表2)と、育成牛の昼夜放牧条件下での最高値である83(図2)よりも低いが、実用的なレベルである。
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成果の活用面・留意点 |
- 同様の方法で発情判定するシステムにおいて、飼養条件や歩数計の装着場所に応じて条件設定する際の参考となる。最適設定は、これら2つの条件以外の影響も受けるため、導入時に微調整が必要である。
- 発情行動自体をとらえる方法ではないので、他の情報も参考にして授精の判断をおこなう。また、搾乳牛では搾乳に伴う牛の移動が、歩数変化に大きく影響することに注意が必要である。特に放牧条件下では、牧区変更が歩数の急激な変化を招かないよう、転牧順序を工夫する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
乳牛
繁殖性改善
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