タイトル |
養豚場における生産性阻害疾病病原体の感染実態と離乳後事故率の低減対策 |
担当機関 |
家畜研究部 |
研究期間 |
2007~2008 |
研究担当者 |
仙名和浩
小原潤子
二階堂聡
梶野清二
山本裕介
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発行年度 |
2008 |
要約 |
北海道内の養豚場において、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)等生産性阻害疾病病原体の複合感染は離乳後事故率を増加させており、離乳後事故率を低減するためには豚舎内を壁で仕切り、部屋単位でオールイン・オールアウトする方式が有効である。
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キーワード |
PRRSウイルス、豚サーコウイルス2型、離乳後事故率、オールイン・オールアウト
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背景・ねらい |
近年、北海道内の養豚場においても離乳後事故率が増加傾向にあり、豚サーコウイルス2型(PCV2)やPRRSV等の関与が指摘されている。そこで、道内養豚場におけるPCV2等の感染実態を調査し、離乳後事故率との関連を明らかにするとともに、豚の管理方式が感染状況に及ぼす影響を検討し、事故率低減のための技術対策を示す。
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成果の内容・特徴 |
- 常時母豚頭数が85~2,020頭の養豚場12戸の離乳後事故率は、1.1~14.4%である(表1)。豚舎内部を壁で仕切り、部屋(豚室)単位でオールイン・オールアウト(AIAO)している農場は、分娩豚舎が4戸、離乳子豚舎が8戸、肥育豚舎が5戸であり、離乳子豚舎をAIAO方式とする農場が多い(表1)。母豚に毒素産生性Pasteurella multocida(Pm+)およびBordetella bronchiseptica(Bb)の、子豚にMycoplasma hyopneumoniae(Mhp)のワクチンを接種している農場がそれぞれ10戸と最も多い。
- PCV2は12戸すべての子豚・肥育豚で感染が確認でき、検出されたPCV2の遺伝子型はGroup1が4戸、Group2が8戸である(表1)。PRRSV陽性農場8戸のうち、離乳子豚舎が連続方式のHおよびK農場では離乳子豚舎でのPRRSV感染が認められたのに対し、AIAO方式のI、JおよびL農場では感染が認められず(図1)、豚舎の飼育形態によってPRRSVの感染は制御可能である。
- PRRSVおよびPm+の感染ならびにActinobacillus pleuropneumoniae(App)の複数血清型の感染は、有意に離乳後事故率を増加させている(表2)。また、感染する病原体の種類が増えると離乳後事故率も増加し(Spearmanの順位相関係数:0.7804)、複合感染によって離乳後事故率が増加する実態を示している。一方、PCV2の血清中ウイルス量および遺伝子型と離乳後事故率の間に有意な関係はなく、既往の報告と一致しない(表3)。
- 肥育豚舎が連続飼育方式の農場は、AIAO方式の農場に比べて離乳後事故率が有意に高い(表2)。これらの農場では、感染が認められる病原体の種類も多く(表1)、連続飼育により病原体の常在化を助長している。一方、A農場のように連続飼育方式であっても、常在する病原体の種類が少なければ離乳後事故率を低く抑えられる。
- 離乳後事故率を低減するためには、離乳子豚舎および肥育豚舎を、病原体の感染を阻止または軽減できるAIAO方式とすることが有効である。
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成果の活用面・留意点 |
- 養豚生産者および養豚獣医師が農場の衛生対策改善の際に活用する。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「養豚場における生産性阻害疾病病原体の感染実態と離乳後事故率の低減対策」(指導参考)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
繁殖性改善
豚
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