タイトル |
BSE類症鑑別のための牛の聴性脳幹反応の基礎的知見 |
担当機関 |
遺伝子工学科 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
山本裕介
松井義貴
新井鐘蔵(動衛研)
川本哲
草刈直仁
尾上貞雄
福田茂夫
櫻井由絵
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発行年度 |
2008 |
要約 |
黒毛和種成雌牛ならびにホルスタイン種1、3、6および12ヵ月齢牛の聴性脳幹反応(ABR)の正常値を明らかにするとともに、今までに測定されたことのないBSE以外の疾病牛についてのABR解析から、BSE類症鑑別のための基礎的な知見を示す。
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キーワード |
ABR、牛、黒毛和種、ホルスタイン種、月齢、鎮静剤、BSE、乳熱、ケトーシス、ダウナー症候群
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背景・ねらい |
牛海綿状脳症(BSE)罹患牛では、有効な生前診断技術はまだ確立されていないが、ヒトで脳幹障害や聴覚系の診断として利用されている聴性脳幹反応(ABR)を牛に応用することで、BSE罹患牛に見られる脳幹の機能障害を客観的に診断することができると考えられる。そこで、BSE臨床診断としてABR検査を行う際に必要とされる各種条件下における牛のABR正常値を明らかにし、併せてBSE以外の疾病牛におけるABRの特性を解析する。
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成果の内容・特徴 |
- 黒毛和種(2~12歳)のABR波形形状は、ホルスタイン種(2~6歳)とほぼ同様にⅠ、Ⅱ、ⅢおよびⅤ波が確認されたが、Ⅰ-Ⅲ波およびⅠ-Ⅴ波の波間潜時はホルスタイン種より有意に短く(表1)、品種間で正常値が異なる。
- ホルスタイン種の1、3、6および12ヵ月齢(各10頭)のABRは、刺激音圧75dB以上で波形が認められ、波形の形状も成牛(2~6才)と同様である。しかし、成牛に比べて6ヵ月齢まではⅠ波(1.52vs.1.45~1.48msec)およびⅢ波(3.55vs.3.38~3.52msec)の潜時が短く、また、各月齢でⅢ-Ⅴ波の波間潜時が長い傾向にあるなど(表2)、成長に伴う若干の違いが見られる。
- ホルスタイン種において、BSE類症鑑別のためBSE以外の疾病牛(第四胃変位6頭、乳熱2頭、ケトーシス2頭、心疾患2頭、神経症状2頭、ダウナー症候群3頭)のABR検査を行い、正常牛および脳内接種後のBSE罹患牛(95dB以下でABR波形消失、Ⅰ-Ⅴ波の波間潜時の進行性延長等が特徴)と比較したところ、第四胃変位、心疾患および神経症状の牛ではABR波形と波間潜時に正常牛との大きな違いは見られない。しかし、乳熱、ケトーシスおよびダウナー症候群では、BSE罹患牛に類似するⅠ-Ⅴ波の波間潜時の延長が見られる症例(各1頭)がある(表3)。
- BSE罹患牛に類似の波間潜時を示した前述の3頭のうち95dB以下の検査が実施できたケトーシス牛とダウナー症候群の牛では、95dB以下でもABR波形が検出される。また、治癒後の検査も可能であった乳熱牛とケトーシス牛では、症状の改善に伴いABRの波形と波間潜時の正常化が認められ(図1)、回復可能な神経伝達障害と判断される。この3頭の結果は、不可逆性の神経伝達障害を示す脳内接種後のBSE罹患牛のABR検査結果とは一致しない。
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成果の活用面・留意点 |
- ABR検査によるBSE臨床診断技術確立のための正常牛の基準値として活用される。
- ABR検査中の血中コルチゾール濃度の比較(鎮静剤あり:8.8 ng/ml vs.鎮静剤なし:18.2ng/ml、p0.01)から、牛のストレス軽減のためには検査前の鎮静剤(キシラジン約0.05mg/kg)投与が必要である。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「牛におけるBSE臨床診断のための聴性脳幹反応の正常値」(研究参考)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
診断技術
品種
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