タイトル |
畑作酪農地帯における乾式メタン発酵の施設導入場面と利用可能原料 |
担当機関 |
道立十勝農試 |
研究期間 |
2007~2008 |
研究担当者 |
湊啓子
山田洋文
田村忠
甲田裕幸
原悟志
浦谷孝義
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発行年度 |
2008 |
要約 |
ガレージ方式の乾式メタン発酵施設は、畑作酪農地帯において堆肥センターでの利用が想定される。肉牛ふん尿は乾式メタン発酵の原料となり、農産残渣や生ごみ等の添加によりガス発生量は増加する。
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キーワード |
バイオマス、乾式メタン発酵、肉牛ふん尿、農産残渣、発酵特性
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背景・ねらい |
乾式メタン発酵法はスラリーを原料とする湿式法と異なり、固形物濃度20~40%の原料を利用できるため、畑酪地帯で発生する固形状バイオマスからのエネルギー回収に利用できる可能性がある。本試験では、乾式メタン発酵施設の先進導入事例における稼働実態を踏まえ、処理方式別にみた適用場面と運営上の課題を明らかにする。また、畑作酪農地帯で得られるバイオマス資源の乾式メタン発酵への利用可能性を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 千葉県A事例ではガレージ方式、京都府B事例ではコンポガス方式を採用している。運営コストはそれぞれ、毎年4,045万円、3億1,735万円であり、両事例とも運営コストの約9割が施設に係る固定費であった(表1)。現状の堆肥センターの規模を維持することを前提にした導入場面では、乾式メタン発酵施設の維持管理時間が短く、専属従事者を必要としないガレージ方式の導入が想定される。
- 両事例とも発酵原料の種類や混合割合によって、発酵が不安定になるといった問題がある(表2)。また、ガレージ方式では、発酵を 促進させるために原料に対してメタン菌液を噴霧・回収・再利用しており、このサイクルを維持するための原料の配合や投入方法が模索されている。
- 十勝地域で発生し、乾式メタン発酵で利用可能と考えられるバイオマス資源は約98%が家畜ふん尿である。農産残渣としては、ながいも(5,842t)、だいこん(2,528t)、にんじん(2,483t)の利用が可能である(表3)。
- 肉牛ふん尿オガクズ混合物(以下、肉牛ふん尿)に種汚泥(乳牛ふん尿メタン発酵消化液)を約1割添加して、テドラバックを装着した1Lフラスコに充填・密閉して37℃で42~70日間培養すると、投入有機物あたり78ml/g、現物あたり23ml/gのメタンガス(バイオガス組成:メタン濃度平均59%、硫化水素最高濃度1000~3600ppm)が発生する。また、原料中の固形物濃度が37%以上でガス発生量は大幅に減少する(図1a))。発酵残渣中NH4-N濃度が0.4%以上でガス発生抑制効果が高まるため(図1b)、他の有機性廃棄物との混合処理場面では、窒素含量に留意する必要がある。
- 肉牛ふん尿に農産残渣や生ごみを添加することにより、投入有機物あたりのメタンガス発生量は、農産残渣10%添加(現物重量比)で5~18%(たまねぎ5%、キャベツ5%、だいこん7%、にんじん16%、ながいも18%)、擬似生ごみ5~10%添加で13~19%増加する(図1c,d)。生ごみは10%添加で発酵遅延が見られ、15%添加ではほとんどガスが発生しない。
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成果の活用面・留意点 |
- 乾式メタン発酵法の実用技術開発および技術導入を検討する際の参考となる。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「畑作酪農地帯における乾式メタン発酵施設の適用場面とバイオマス資源の発酵特性」(研究参考)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
キャベツ
コスト
だいこん
たまねぎ
肉牛
乳牛
にんじん
メタン発酵消化液
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