北海道の常時湛水連作田では稲わら残渣炭素の50%相当のCH4が発生する

タイトル 北海道の常時湛水連作田では稲わら残渣炭素の50%相当のCH4が発生する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2003~2008
研究担当者 Habib M. Naser(北海道大)
永田 修
田村さつき(北海道大)
波多野隆介(北海道大)
発行年度 2008
要約 北海道道央の中干し、間断灌漑が行われていない常時湛水連作田では、鋤込まれる稲わら残渣量に対し発生するCH4は稲わら残渣量が多いほど有意に増加し、稲わら残渣の50%に相当する炭素がCH4として放出されている。
キーワード 稲わら残渣、常時湛水、北海道、連作田、CH4
背景・ねらい
    京都議定書の削減目標達成のため温室効果ガス削減が急務である。日本の温室効果ガス総発生量の内、農業由来の寄与は2%あり、その内21%が水田からのメタン(CH4)発生に由来する。これまで、水田からのCH4発生に対し、中干し、間断灌漑という水管理技術に削減効果があること、稲わら残渣の鋤込みが発生を増加させることが報告されている。しかし、北海道では、収穫後の圃場の乾燥が進みにくいため、稲わら残渣を圃場に放置する場合が多く、また、積雪があるため、圃場に放置した稲わら残渣も分解が進行しにくい状況にある。水田にすき込まれた稲わら残渣に対するCH4発生の定量的評価は整理されていない。本研究では、北海道の米の主産地である北海道道央の、常時湛水で管理された連作田を対象に、鋤込まれた稲わら残渣量とCH4発生量の関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. CH4フラックスは、5mg C m-2 hr-1から72 mg C m-2 hr-1の範囲にあり、落水直後はいずれの圃場も速やかにCH4フラックスは低下し、収穫時期にかけてフラックスはほぼ0で推移する(図1)。
  2. CH4発生量は、1%水準で、稲わら残渣量が多くなるほど有意に増加する傾向がある(表1)。一方、調査圃場の土壌炭素量とCH4発生量の間には、有意な相関関係は認められない。
  3. 稲わら残渣による炭素量とCH4フラックスの間には、1%水準で正の有意な相関関係が認められる(図2)。この関係式から、稲わら残渣に含まれる炭素の約50%に相当する炭素がCH4として放出される。本成果から、稲わら残渣の鋤込み量からCH4発生量の予測が可能である。
成果の活用面・留意点
  1. 籾わら比のデータを活用することにより、CH4発生量を高い精度で推定することが可能であり、温室効果ガス発生量のインベントリ精緻化に貢献出来る。
  2. 本成果は、稲わら残渣を利用したバイオ燃料生産システムの、温室効果ガス排出削減効果をLCA評価する際に利用出来る。
  3. 対象とした圃場は、低地土、グライ土、水管理は、中干し、間断灌漑を行わない常時湛水である。
  4. CH4フラックスの測定は水稲栽培期間に行ったものである。
  5. 収穫後の刈り株はいずれの圃場においても鋤込まれている。
図表1 214056-1.jpg
図表2 214056-2.jpg
図表3 214056-3.jpg
カテゴリ 乾燥 水田 水稲 水管理

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