タイトル |
イネ遠縁交雑後代における分離異常と農業形質との連鎖 |
担当機関 |
北陸農業試験場 |
研究期間 |
1992~1994 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
インド型品種・密陽23号と日本型品種・アキヒカリとの遠縁雑種(F2)において、イネ染色体全域にわたるRFLP(制限酵素断片長多型)マーカーを用いた解析から、第2,3,6,7,8,9,12染色体上に遺伝子の伝達率(分離頻度)に異常を生じ、そのうち第3,7,12染色体上の領域では収量性に関わる農業形質との連鎖を明らかにした。
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背景・ねらい |
選抜の効率化を図ることは、育種において重要な課題の一つである。インド型などの遠縁な品種を育種素材あるいは有用遺伝資源として導入する場合、生殖的 隔離機構あるいは地域環境への適応性等の違いにより、ゲノム全体の遺伝子が必ずしも後代に均等に伝達されるとは限らない。多収性系統の育成が期待されるインド型品種「密陽23号」と日本型品種「アキヒカリ」との雑種後代について、遺伝子の分離頻度における異常(伝達率の違い)の有無、さらにはこれに連鎖する農業形質の有無を明らかにし、選抜効率の向上に向けた基礎的情報を得る。
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成果の内容・特徴 |
- RFLPマーカーを用いたゲノム全体にわたる解析より、第2,3,6,7,8,9,12染色体上に遺伝子の分離頻度における異常(伝達率の違い)を示す領域が存在することを明らかにした。
- 第7,8,9染色体上の領域ではアキヒカリ型が、第3,6,12染色体上では密陽23号型が,第2染色体上ではヘテロ型の遺伝子型の分離が増加することが示された。
- このうち特に、第3染色体上の分離異常領域では出穂性、籾長、第7染色体上では出穂性、稈長、穂長、籾長、籾幅、脱粒性と、第12染色体では稈長などの、重要な農業形質に関わる遺伝子座がそれぞれに連鎖していると推定された。
- この様な、遺伝子分離頻度の異常およびそれに連鎖する農業形質の有無に関する情報は、遠縁な品種・系統を育種素材として、多収性あるいは耐病虫害抵抗性等の日本型品種への導入を図る場合、選抜雑種集団の規模設定等、効率的な選抜を行う上で重要になる。
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成果の活用面・留意点 |
- 染色体全体に渡るRFLP分析を行ったが、第5,6染色体上の一部でRFLPの多型が検出できない領域があった。従ってこれら領域については、未解析である。
- 今回検出した遺伝子頻度の分離異常のなかには、遺伝的なものの他に、用いた集団の育成過程における環境条件等の影響により生じたものを含む可能性がある。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
病害虫
育種
遺伝資源
多収性
抵抗性
品種
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