タイトル |
水稲の減農薬・減化学肥料栽培の付加価値と取組み事例からみたタイプ別生産・販売の特徴 |
担当機関 |
新潟県農業総合研究所 |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
水稲の減農薬・減化学肥料栽培は、慣行栽培に比べ減収しやすいが、安全性や信頼性によりプレミアムを得ることで、高付加価値化による有利販売が可能となる。また、その取組み事例は3つのタイプに分けられるが、地域や経営の条件に応じた方法を選択することが望ましい。
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背景・ねらい |
水稲栽培では、これまでの多投入型の増産重視から生態系を活用した少投入型の品質重視の方向へのシフトが望まれている。一方、消費サイドにおいても、おいしくて、安全性の高いお米を望む声が多くなり、減農薬・減化学肥料栽培米への関心は高っている。そこで、同栽培の経済性を明らかにするとともに、その取組み方法をタイプ別に示した。
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成果の内容・特徴 |
- 水稲の減農薬・減化学肥料栽培の付加価値は以下のとおりである(表1)。
(1) 減農薬及び無農薬栽培は、慣行栽培に比べ物財費や償却費の増加と収量の減少に伴い収益性が低下する。また、有機肥料散布や除草等によって労働時間が増加する。 (2) しかし、消費者に対する安全性や信頼性の確保からプレミアムを形成することで有利販売が可能になり付加価値が得られる。 (3) だが、慣行栽培価格に対するプレミアムが減農薬米では1.1千円/60kg、無農薬米では6.5千円/60kgを下回ると付加価値は得られない。
- 減農薬・減化学肥料栽培の取組み方法には、以下の3タイプがある(表2)。
(1) JA主導型:価格形成力は弱いが、既存の生産及び販売基盤を活用した取組みが可能。取り組みのポイントは、(ア)有機物の安定供給及び圃場への運搬・散布サービスに努める。 (イ) 多様な農家が取り組める基準を設定する。(ウ)ロット・品揃えを活かし農家リスクの小さいマーケティングを行なう。 (2) 農業者グループ型:農業生産法人または構成員の出資による販売会社が農家から米を買い取り消費者に販売する形態。取り組みのポイントは、(ア)ロットを揃えた取引で低コスト な資材調達を図る。(イ)協定に基づく品質管理を徹底し商品コンセプトづくりに努め、販売先に対する価格形成の主導権を持つ。(ウ)農家への概算金払いには金融機関からの短期借入金が必要なため、販売業務に当たる法人は信用を損なわないよう留意する。 (3) 個別経営型:前の2者に比べロット・品揃えが小さく自己完結であるため、販路の限定や経費増が伴いやすい。取り組みのポイントは、(ア)航空防除の除外等トラブルが発生しないように周辺農家への協力要請を図る。(イ)圃場条件に応じたきめ細かい品質管理に努め、商品の信頼性を高める。(ウ)小ロットに応じた顧客開拓及びサービスによって「顔の見える関係」を構築する。
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成果の活用面・留意点 |
- 試算の前提条件は、品種コシヒカリ、慣行栽培の農家仮渡価格の18千円/60kg(平成9年産米)とした。
- 試算に用いた栽培条件は、いもち病等の発生が少ない地域を対象にしたものであり、発生が多い地域ではそうした点を考慮した栽培基準を設定する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
土づくり
肥料
病害虫
いもち病
経営管理
高付加価値
栽培条件
除草
水稲
低コスト
農薬
肥料散布
品種
防除
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