タイトル |
データベース化による水田の施肥窒素脱窒率の推定 |
担当機関 |
北陸農業試験場 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
我が国の水田における施肥窒素の脱窒率をデータベース化し、土壌タイプや資材施用を考慮して整理した。慣行施肥で多用されるアンモニア系肥料の脱窒率は、基肥20~40%、活着肥30~70%、分げつ肥10~40%、穂肥5~35%である。基肥平均脱窒率(30%)と穂肥平均脱窒率(20%)の土壌タイプ間の差は小さい。
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背景・ねらい |
水田が環境に及ぼす影響を評価する際に窒素収支の推定が不可欠である。しかし、統計数値から推定できるのは窒素肥料や有機物由来の投入量および収穫物による搬出量に限られる。一方、空中窒素固定による収入や脱窒(施肥、土壌、灌漑水由来窒素がN2ないしN2Oガスで排出されること)による支出は、施肥量に匹敵する量と推定されているが信頼できる平均的な数値は得られていない。そこで、既往の報告値から施肥窒素の脱窒率をデータベース化し条件別に知見を整理し妥当な数値を得る。
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成果の内容・特徴 |
- 我が国の水田における施肥窒素の脱窒について記載のある論文を日本農学文献検索等から検索し(1976年以降の17論文)、重窒素肥料施用試験において重窒素N2ガスを直接捕集した報告値(5データ)、重窒素の未回収率(施肥量から水稲吸収と土壌残存を差し引いたもので、これを脱窒率と見なした)の報告値(153データ)を収集した。
- 収集した脱窒率データは、肥料の種類、土壌タイプ、施肥時期、資材施用等の条件ごとに分類して表計算ソフト(エクセル)に入力し集計整理した(図1)。
- 慣行施肥で多用されるアンモニア系肥料の脱窒率を標準偏差の範囲で示すと、細粒土の基肥20~40%(中粗粒土(以下同様):20~40%)、活着期追肥30~40%(40~70%、分げつ期追肥15~25%(10~40%)、穂肥5~25%(10~35%)である(図2)。
- 細粒土では稲わら施用で基肥の脱窒率は著しく低下するが、施肥時期が遅くなるにつれて脱窒率が増加し穂肥の脱窒率は稲わら無施用を上回る。一方、中粗粒土では基肥重点施肥でも追肥重点施肥でも稲わら施用によって脱窒率が低下する(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 基肥平均脱窒率(30%)と穂肥平均脱窒率(20%)の土壌タイプ間の差は小さいので、この脱窒率を我が国水田のマクロな脱窒量の試算根拠として利用できる。
- 施肥窒素の未回収率を脱窒率と見なしたが、溶脱量が大きいと推定される土壌では脱窒率を過大評価した可能性があり、溶脱量を評価しておく必要がある。
- 本データベースをホームページ等で公開し、研究者が自由にデータを追加し利用できるデータ共有システムを構築する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
水田
施肥
データ共有
データベース
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