レトロトランスポゾンTos17を用いたイネ小粒遺伝子sg1のクローニングと機能解析

タイトル レトロトランスポゾンTos17を用いたイネ小粒遺伝子sg1のクローニングと機能解析
担当機関 北陸農業試験場
研究期間 2000~2000
研究担当者
発行年度 2000
要約 発現形質の解析に基づき、レトロトランスポゾンTos17を用いて小粒遺伝子sg1のcDNAをクローニングした。この遺伝子は粒形を制御し、また光や植物ホルモンの影響下で根の形態形成にも関与している。
背景・ねらい 農業上重要な形質に関与する遺伝子には未解明のものが多く、有用遺伝子の同定とクローニングが緊急で重要な課題となっている。この目的では、イネに内在するレトロトランスポゾンTos17を利用し、表現型の解析に基づいて遺伝子を同定しクローニングする方法が有効と考えられる。Tos17は細胞培養過程で活性化されて遺伝子内に挿入され、遺伝子を突然変異遺伝子とする。そこで、表現型の観察によって培養突然変異を探索し、この中からTos17による突然変異遺伝子を同定することによって、Tos17の塩基配列をプローブとして用いた遺伝子のクローニングを行うことができる。本研究では「あきたこまち」培養変異集団を供試して遺伝子の同定とクローニングを行なった結果、形態形成に関与する遺伝子の一つをクローニングすることができた。また、供試集団での遺伝子クローニングの効率も明らかになった。
成果の内容・特徴
  1. 供試した「あきたこまち」培養変異集団では27%以上の系統で形態形質・生育特性関連形質等に可視的突然変異があり、またこの突然変異のうち約30%がTos17の遺伝子内挿入による突然変異であった(表1)。
  2. 表現型およびゲノミックサザン分析等の解析結果によって供試集団中の小粒突然変異(SG1)がTos17による突然変異であることが確認できた。SG1突然変異は千粒重が約15%の減少を示す他、分げつ数が10~20%、草丈が約10cm減少し、やや巻葉となり、また根の伸長では光や植物ホルモンに対する反応が原品種とは異なる(図1、表2)。
  3. Tos17の塩基配列をテンプレートとして用いたTAIL-PCRで得られたTos17挿入部位の隣接配列プローブとして用いてSG1突然変異を制御している遺伝子のcDNAをクローニングし、この遺伝子をsg1と名付けた(図2)。この遺伝子は新たに発見された遺伝子で、イネのゲノム内に1コピーのみ存在する。このcDNAの機能はアンチセンス配列を野生型個体に導入して確認した。sg1遺伝子の形質発現の分子機構は解明されていない。
  4. sg1遺伝子cDNAのアンチセンス配列をイネの野生型個体に導入した結果、小粒性、草丈の減少等、変異形質を種々の程度に呈する組換え体が得られた。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究で用いたTos17による遺伝子クローニング法は遺伝子同定の確率が高く、複雑な遺伝子発現機構で制御されている農業形質の遺伝子についても高い効率でクローニングを行なうことができる。
  2. sg1遺伝子は形態形成を制御する新規遺伝子であり、形態形成に関する今後の研究の重要な材料となる。
図表1 214515-1.jpg
図表2 214515-2.jpg
図表3 214515-3.jpg
図表4 214515-4.jpg
カテゴリ 品種

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