農家圃場レベルの降雨栽培暦を用いた年次・年内降雨変動の把握と農家の作付け選択の支援

タイトル 農家圃場レベルの降雨栽培暦を用いた年次・年内降雨変動の把握と農家の作付け選択の支援
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2000~2004
研究担当者 A.Yorote(マリ農村経済研究所ソトゥバ地域農業試験場)
Abou Berthe
John Caldwell
Mamadou Doumbia
佐々木華織(東北農業研究センター)
小沢聖
菅野洋光
櫻井武司(JIRCAS)
発行年度 2004
要約 〔農家圃場に気象観測装置を設置し、日降雨量と作付け選択を農家レベルと村落レベルの栽培暦に表示し、農家の播種と雨期の開始を把握することができる。西アフリカ・マリの年間雨量 800mm
背景・ねらい 西アフリカ・サヘル地帯の天水農業は、降雨変動による生産不安定性が大きく、農家はリスク回避のために低投資と低収量の傾向が強い。しかし、そうした行動をもたらす原因である同一年内の時期的・面的降雨変動は、いままで農家レベルでは把握されていなかった。そこで、農家の降雨に応じた栽培選択を把握し、降雨栽培暦から農家が容易に作物の作付け計画が可能となる支援システムを開発する必要があった。
成果の内容・特徴
  1. 「降雨栽培暦」は、農家圃場における降雨量と作付け栽培選択の時間的・作物別変動を視覚的に簡単に把握できる手法である。作成に必要なデータは、降雨量と作業過程の日付である。農家圃場に気象観測装置を設置し、降雨量を日単位で記録する。作付けと栽培作業の日付は毎週記録する。作図は、降雨量を左縦軸に、時間経過を日単位で横軸に表し、作物を上下に並べ、その横線上に栽培過程の日付を記す(図1)。
  2. 「降雨栽培暦」を実施する農家は、自分自身の問題として主体的に気象と作付けの観察に取り組める。行政村で1週間のうちに4段階の過程で農家のリスク受容度と土地利用を反映する代表農家を参加型に選定できる。1)、全村農民集会を開催し、農家自身に土地利用地図を描いてもらい、農地を分類し、土壌、地形列等の特徴を引き出す。2)、自由発想法とマトリックス法でリスク指標を引き出す。リスクという概念の対訳語が現地語にない場合、「いつ起こるか、前もって知ることができない困難」と説明する。この困難に耐えられるものをリスク受容の指標とし、大紙面の左側にシンボルと共通語で書き入れる。続いて各参加者に最も重要な指標の横に小石を置いてもらい、総数でランク付けする。3)、悉皆調査により全農家のリスク受容指標を調査し、農家を分類する。4)、再び全村集会を開催し、リスク受容を行に、農地利用を列に大白紙に書き、悉皆調査結果に基づいて各セルに代表農家番号を記入する。全農家が選定結果を理解し、所有感を持つ。
  3. 所得増加規定要因に対する農民意識
    村落レベルでは、各農家の「降雨栽培暦」に基づいて、作物の平均作付け日付を示す全村栽培暦も作図できる(図2)。毎年作成すれば、年間変動を把握し、各農家は自らの「降雨栽培暦」と比較できる(写真1)。
  4. マリの 2 つの研究サイトでは、2001 年から各村 15 戸の農家と一緒に開発して 4 年間実施した結果、年間降雨量 800mm半乾燥地帯では、2001 年にミレット(トウジンビエ)とソルガム(モロコシ)の 57%筆は雨期開始期に 7 日以内に 10mm 以上の降雨が訪れる前に早期播種され、その 82%筆は図 1ソルガムのように再播種を必用とした。2002 年に農家は平均 17 日間播種を遅らせ、30%筆だけが早期播種され、再播種は 44% に減少した。年間降雨量 1200mm 半湿潤地帯では、雨期が約 1 か月長いので、農家は 2 回の降雨イベントより数週間遅れて播種していたが、栽培暦を利用して降雨に応じて余分日数を減らし播種を早めた。
成果の活用面・留意点
  1. この手法は、西アフリカ・サヘル地帯で広く利用できると考えられる。研究目的で利用した自動雨量観測装置(約60,000円)に代わり農家が直接見て分かる廉価(本体と脚約3,000円)な簡易雨量計が最近マリで生産されるようになり、農家がこれを購入し、栽培暦を自ら作成することができる。これにより、再播種をもたらす不適時早期播種、収穫を遅らせる不適時播種遅延をともに避け、生産の安定化に寄与できる。
図表1 214618-1.gif
カテゴリ 乾燥 ソルガム 播種

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