タイトル |
グリーニング病激発地での無病苗の植付と薬剤施用によるカンキツ栽培延長・増収効果 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2004~2008 |
研究担当者 |
Doan Huu Tien(ベトナム南部果樹研究所)
加納健
山田隆一
市瀬克也
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発行年度 |
2005 |
要約 |
| カンキツグリーニング病激発地のベトナムのメコンデルタ地帯でのカンキツ品種キングマンダリンの栽培において、本病の媒介虫であるミカンキジラミ、(Diaphorina citri)に対する浸透性薬剤と無病苗を利用した果樹園では、これらを利用しなかった果樹園に比べて栽培期間が1~2年間長く、所得も高い。
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背景・ねらい |
ベトナム南部メコンデルタでは、高収益のキングマンダリンがカンキツグリーニング病(以下CG)によって大きな経済的打撃を受けている。政府は、その対策として、公的農業機関による無病が証明された苗(無病苗)の定植を行い、その後、本病害の媒介虫ミカンキジラミに対する浸透性薬剤の施用を推奨している。しかし、このような栽培法による増収及び所得増加効果は実証されていない。本研究は、この栽培法の防除効果実証試験実施の妥当性を確認するために、農家聞き取り調査によって収量、栽培期間、費用に関するデータを収集・分析することをねらいとする。
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成果の内容・特徴 |
- 調査は、2005年10、11月にメコンデルタ地帯における農家を任意に116戸選び、定植苗の購入実態、浸透性薬剤施用、各種費用、粗収入等の項目について聞き取りした。
- 定植時の無病苗の採否と浸透性薬剤使用の有無の組合せにより、キングマンダリン栽培管理は、1)定植した苗に公的農業機関による無病証明が付与されていない苗(以下非証明苗)・浸透性薬剤を用いない(以下薬剤非施用)、2)非証明苗・イミダクロプリド原液を果樹あたり1.5ml施用(以下薬剤施用)、3)無病苗・薬剤非施用、4)無病苗・薬剤施用の4通りの栽培管理法に区別される。
- ベトナムメコンデルタでは、300万ドン/10aが必要な最低所得と考える農家が多いことから、苗定植時からこの所得が維持される最終年までの年を経済栽培期間とすると、薬剤施用圃場では、薬剤非施用圃場に比べ、経済栽培期間中の年当たり平均費用が高くなる傾向がある(表1)。
- いずれの管理法でも、3年目にキングマンダリン栽培による所得は黒字となり、経済栽培期間は薬剤非施用圃場で5-6年、薬剤施用圃場で7-8年となる(図1)。また無病苗定植は経済栽培期間を延長する効果はないが、非証明苗圃場に比べ果実収量は多い。経済栽培期間中の10aあたりの年間平均収量は、非証明苗・薬剤非施用で0.588 ± 0.128、非証明苗・薬剤施用1.150 ± 0.255、証明苗・薬剤非施用で0.730±0.142、証明苗・薬剤施用で1.758 ± 0.342トンである。管理費用が高くなることを勘案しても現行防除対策の中では、所得を最大とする管理は無病苗・薬剤施用であり、経済栽培期間中の年平均所得は約700万ドン/10aに達する。
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成果の活用面・留意点 |
- ベトナム南部メコンデルタ地帯でのキングマンダリン栽培には、無病苗・薬剤施用による管理を農家に推奨できる可能性がある。これ以外の品種、また栽培地域に関しては、別途研究を行う必要がある。
- 薬剤施用農家では薬剤非施用農家に比べて、肥料支出が大きいことから、経済栽培期間延長や収量増加には、施肥効果が寄与している可能性がある。
- 経済栽培期間延長や収量増加につながる薬剤のスクリーニング、また最適薬剤施用法決定のための試験を行う必要がある。
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図表1 |
214658-1.pdf |
図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
肥料
病害虫
栽培技術
施肥
品種
防除
薬剤
その他のかんきつ
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