熱帯牧草Brachiaria humidicolaの硝酸化成抑制作用のアンモニウムイオンや低pHによる誘導

タイトル 熱帯牧草Brachiaria humidicolaの硝酸化成抑制作用のアンモニウムイオンや低pHによる誘導
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2011
研究担当者 Guntur V. Subbarao
伊藤 治
発行年度 2006
要約  熱帯牧草Brachiaria humidicolaの根からの分泌物は、土壌で進行する硝酸化成を抑制する作用を有するが、その作用は酸性条件下のアンモニウムイオンにより強く誘導される
背景・ねらい
 これまでの我々の研究により、熱帯牧草であるBrachiaria humidicolaが、根からの分泌物により土壌中の硝酸化成作用を抑制する事が明らかにされ、この現象を化学薬剤による硝酸化成抑制と対比する意味で、生物的硝酸化成抑制(Biological Nitrification Inhibition, BNI)と呼んでいる。BNI作用の発現機構を解明することは、このBNI作用を栽培技術の中で活用し、より窒素利用効率が高く環境負荷の低い栽培体系を確立するために重要な課題であると考えられる。そこで、BNI作用の発現に関わる因子として培地中の窒素環境に着目し、窒素の有無並びに形態の違いによりBNI活性がどのように誘導されてくるかを検討した。
成果の内容・特徴
  1. 窒素源としてNH4+を含む培養液で植物を60日間育成し、NO3-、NH4+ を含む溶液または低pH処理液を使用して無傷の根から分泌物を集めた。BNI活性は、化学的硝化抑制剤の1つであるアリルチオ尿素(Allylthiourea, AT)の0.22マイクロモルによって引き起こされる阻害を1 AT単位として表現することとした。根からの分泌物を塩化アンモニウムまたは硝酸アンモニウム液で集めた場合に、BNI 活性が蒸留水の対照区より数倍高くなった(表 1)。この場合、分泌物収集液のpHは24時間後には3から4の範囲の酸性となった。酸性pHのみ、すなわち処理液として1 mM塩酸または硝酸を使用した場合、 BNI活性の上昇は認められなかった。収集液に重炭酸アンモニウム溶液を使用し、NH4+の取り込みにより pH が酸性とはならない用にした場合には、BNI活性はこれらの中間的な値となった。BNI 活性の上昇は、NH4+の存在と酸性 pH との相乗作用により誘導されることが示された。
  2. BNI活性を根の分泌物収集溶液にNH4+が存在する場合と存在しない場合について、NH4+およびNO3存在で生育させた植物を使って、2時間のサンプリング間隔で24 時間、および24時間の間隔で10日間モニターした。処理条件は図1の通りである。NH4+およびNO3-で生育した植物の両方において、分泌物収集溶液中にNH4+の存在する場合のBNI活性は、NH4+の存在しない場合に比較して数倍高かった (図2 a)。生育段階での窒素の形態については、NH4+育成の場合がNO3-育成の場合に比較して高かった。NH4+により誘導された活性は、10日間のモニター期間中でも維持されていた(図2 b)。この結果から、根によるBNIの発現には根圏におけるNH4+の存在が重要であることが示された。

成果の活用面・留意点
  1. この知見は、牧草のBNI属性の遺伝子工学的な開発、特に、Brachiaria humidicola根による BNI 活性の生成と発現に関係する遺伝子の分離に大きな意義がある

図表1 214673-1.pdf
図表2 214673-2.gif
図表3 214673-3.gif
カテゴリ 栽培技術 栽培体系 薬剤

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