タイトル |
α-グルコシダーゼ抑制活性(血糖値低下の指標)測定法の開発及びその適用による高活性「豆?(中国伝統食品)」の発見 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
程永強(中国農業大学)
八巻幸二
李里特(中国農業大学)
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発行年度 |
2006 |
要約 |
有色試料に適用できる高感度簡便なα-グルコシダーゼ活性測定法を開発し、測定したところ、中国伝統食品である豆豉には、α-グルコシダーゼの抑制活性の高いものがある。
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背景・ねらい |
生体は、ショ糖などの二糖類をα-グルコシダーゼで分解し、ブドウ糖に変換し糖を小腸から吸収することにより、血糖値を上昇させる。糖尿病患者や血糖値の気になる人は、血糖値の上昇を抑制するため、食前にα-グルコシダーゼを抑制する薬あるいは食品を摂取する。天然物にもこの抑制活性を有する物質が確認されているが、従来の活性測定法では405nmの吸光度を用いるため、食品抽出物等の有色の試料では正確な測定はできない。また、一般的に用いられるIC50値は、コントロールとしての値が測定間でばらつくと大きく変動し、正確な値を求めるには熟練が必要である。そこで、有色試料に適用可能な測定法の開発を試み、さらに中国伝統大豆発酵食品である豆豉は、中国各地で生産され、その機能性が期待されており、成果情報12号(H16年度)では、強いアンジオテンシン変換酵素阻害作用を有する豆豉が報告された。以上のことから、この方法を豆豉に応用し活性の高い製品を探索した。
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成果の内容・特徴 |
- 測定した吸光度直線(抑制直線)の傾きを抑制活性の指標とする新しい測定法であり、応用範囲が広い。
- α-グルコシダーゼの酵素源として、ラット小腸のアセトンパウダーを用い、96穴プレートにこの酵素を入れ、試料の希釈系列を作成し、各ウェルに添加した。合成基質4-Nitrophenyl-a-D-glucopyranosideを用い、37℃、40分加温し、アルカリ性で反応を停止させ同時に発色後405nmの吸光度を測定した。酵素のないブランクも同様に行った。
- 陽性対照として用いた桑葉抽出液は、吸光度直線の傾きが-18.23を示し、強い抑制活性を示した(図1A)。コーヒーでは、直線の傾きが0.176を示し、ほぼ0に近く活性はほとんどないと考えられた(図1B)。
- 強いα-グルコシダーゼの抑制活性を持ち医薬品でもあるボグリボースのそれぞれの濃度を、抑制活性の無いコーヒー試料に添加して有色条件下で傾きを求めた結果、良好な直線関係(r2=0.92)が得られ、この測定法の信頼性が確認された(図2)。
- この測定法の変動係数は、実験内3.39%(n=4)、実験間2.68%(n=3)であった。この結果より、測定法として良好と確認された。
- 各種の茶等(茶葉として熱水抽出の場合1%(w/v)、市販の茶ボトルではそのまま試料とした)を用いて検討した結果、抑制活性が確認されている桑葉抽出液とグアバ茶は、約18と4の傾きが得られ、その他の緑茶、紅茶、コーヒーは1以下であった(図3)。図3中の小グラフは試料の吸光度を示しており、試料によりさまざまであるが、この値は本法による測定値に影響を与えない。グアバ茶と桑葉抽出液は活性がすでに報告されており、傾きが約4以上あれば抑制活性があると判断できる。
- 中国各地からランダムに選択した豆豉の水抽出試料(抽出濃度40%(w/v))は、いくつか高い抑制活性を有するものがあった(図4)。特にBM(江西省)、KKHBS(湖南省)、MK(四川省)の3品は高値であった。
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成果の活用面・留意点 |
- この方法では96穴マイクロプレートを用いることにより、多検体迅速測定が可能となる。
- 実験間で比較するためには、酵素活性を常に一定にする必要があるので、予備実験等を行い、酵素添加量を調節すると良い。
- 試料の測定には年次や製品ロットにも考慮する必要がある。
- 高度な機械の必要もなく、マイクロプレートリーダーがあれば十分に行うことができ初心者にも適している。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
機能性
グアバ
桑
大豆
茶
ばら
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