イネいもち病抵抗性遺伝資源の多様性

タイトル イネいもち病抵抗性遺伝資源の多様性
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 M. J. Telebenco-Yanoria (国際稲研究所)
小林伸哉
生井幸子
大沢良(筑波大学)
福田善通
発行年度 2007
要約 イネ遺伝資源におけるいもち病抵抗性には幅広い多様性があるが、地域によって遺伝変異には偏りがある。特に南アジアやインド型の品種は多様性である一方、日本型品種の多い日本や東アジアでは感受性の品種が多いなど著しい偏りがあり、インド型や日本型品種の地理的分布や生態型分化に対応する。
背景・ねらい
 イネのいもち病抵抗性に関する広範な遺伝資源の多様性研究は、これまでも行われてきたが明確な結果が得られておらずインド型や日本型などのイネの生態型分化との関係も確かではなかった。これは対象とするイネ遺伝資源や抵抗性評価に用いるいもち病判別菌が限定されていたためである。また。一方で近年、国際農林水産業研究センターと国際稲研究所が共同開発した24種の抵抗性遺伝子を対象としたイネいもち病判別品種をもとに、病原性反応を明確に特徴づけたいもち病標準判別菌系20菌系が選抜された。これら菌系を用いて広くアジア、アフリカ、南北アメリカの在来品種を中心としたイネ遺伝資源について、抵抗性の多様性や遺伝的変異を解明する。このことを通じて新遺伝子の探索や、グローバルな視点から地域に対応した抵抗性品種育成のための基礎知見を確保する。
成果の内容・特徴
  1. アジアを中心とする922品種および感受性標準2品種、判別品種26系統、合計948品種は、フィリピン産標準判別いもち病菌20菌系(Telebanco-Yanoriaら、2008)に対するその抵抗性反応パターンから、クラスター分析により6つ(A-F)の品種群に分類できる(表1)。
  2. A、B、Cの3品種群は感受性、D、E、Fの3品種群は比較的抵抗性である。
  3. 相対的な抵抗性はF>E>D>A>C>Bの順となり、品種群Bは最も感受性で、品種群Fは最も抵抗性である。
  4. インド、バングラデッシュなどの南アジアの品種は多様性に富み、全ての品種群を均一に含んでいるが、品種群Bだけはその割合が少ない(図1)。
  5. これに反して日本の品種は、変異に偏りがあり、品種群Bが特に高頻度であり、他の品種群の頻度は少ない。
  6. 中国などの東アジア(日本を含まない)やインドシナ半島、フィリピン、インドネシアなどの東南アジア品種は、全ての品種群をその分布に含んでいるが偏りが見られ、品種群EやFの頻度が比較的高い。
  7. アフリカやアメリカの品種(その他、n=38)数はすくないが、東アジア品種と同様の変異を示す。
  8. インド型、日本型品種間でも変異に違いがあり、インド型がより多様性が高い。
  9. いもち病抵抗性の多様性は、南アジアイネ品種が最も大きく、日本は少なくかつ変異は偏っている。東南アジアや東アジアの品種は、両者の中間的な多様性や変異の偏りを示す。またそれらの変異はイネ品種のインド型や日本型品種の違いにも対応している(データ省略)。
成果の活用面・留意点
  1. 遺伝資源の多様性や遺伝的分布の偏りは、新抵抗性遺伝子の探索や同定研究に利用できる。
  2. 解析結果は、フィリピン産標準判別菌系を用いた結果であり、他地域の菌系を用いた検証が必要である。またアフリカ、アメリカ、さらには野生イネや近代育成品種は含まれていないのでさらに広範囲な遺伝資源を用いた解析も必要である。
図表1 214689-1.pdf
図表2 214689-2.gif
図表3 214689-3.gif
図表4 214689-4.gif
図表5 214689-5.gif
カテゴリ 遺伝資源 いもち病 抵抗性 抵抗性遺伝子 抵抗性品種 品種

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