LTH一遺伝子系統群を用いたイネいもち病菌レースの分類と新命名法

タイトル LTH一遺伝子系統群を用いたイネいもち病菌レースの分類と新命名法
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2006~2010
研究担当者 林長生(農業生物資源研究所)
福田善通(国際農林水産業研究センター)
発行年度 2007
要約 23の抵抗性遺伝子を個々に有するLTH一遺伝子系統をもとにしたイネいもち病菌レースの新国際判別体系(命名法)は、これまでのものと異なりレースと抵抗性遺伝子の関係が分かり易く、国際的な比較ができ、詳細な分類が可能で拡張性も備えている。
背景・ねらい
 熱帯地域では畑地帯や天水田でのイネいもち病の発生が多い。品種抵抗性を利用した防除が有効と考えられるが、インド型稲のいもち病抵抗性遺伝子型や熱帯地域に分布するイネいもち病菌レースの情報は少ない。国際判別品種が選定され現在でも補助的に使われているが、それらの遺伝的背景には、対象外の遺伝子も含まれ国際間の比較として十分には機能していない。近年、国際農林水産業研究センターと国際稲研究所の共同研究により育成された真性抵抗性遺伝子を持たない中国のイネ品種「Lijiangxintuanheigu(LTH)麗江新団黒谷」に真性抵抗性遺伝子を1個ずつ導入した一遺伝子系統を用いることにより、いもち病菌レース判別が高い精度で行なえるようになった。LTH一遺伝子系統を用いることにより、最適化されたイネいもち病菌レースの国際判別システムの構築が可能となったが、このためにはいもち病菌レースの統一した分類、命名法が必要である。
成果の内容・特徴
  1. 30種のLTH一遺伝子系統のうち、国内外産の標準菌株や様々なイネいもち病菌レースを含む約50菌株に対する反応を噴霧接種による感染型により調査し、すべての菌株に同一反応を示したものを重複した系統として除き、残り26系統(23の抵抗性遺伝子対象)を判別系統としている。Pik座の一遺伝子系統の反応を、表1に示す。
  2. いもち病菌レースの命名方式は、現行の国内の判別体系にも採用されている3判別品種を1つの群として、それぞれに1、2、4のコード番号を与え、親和性反応を示すコード番号の合計をレース番号とするGilmourの方法を採用している。本方式は、規則性、柔軟性に優れ、多数の判別品種からなる体系においても、レースと抵抗性遺伝子の対応が直感的に分かり易く、判別品種数が多い判別システムにも適している。
  3. イネいもち病抵抗性遺伝子は、多数の複対立遺伝子が知られている。一遺伝子系統にも4つの遺伝子座に合計20系統の複対立遺伝子が含まれている。同座の対立関係にある遺伝子系統および密接連鎖関係にあると想定される遺伝子系統についてはPii、Pik、Piz、Pita遺伝子座毎に群分け配置している。
  4. 図1のイネいもち病菌レース国際判別体系では、レース番号は5つの部分から構成される。第1群はLTH、IRBLa-A、IRBLsh-S、IRBLb-B、IRBLt-K59、第2群はPii座の3系統の複対立遺伝子、第3群はPik座の7系統の複対立遺伝子、第4群はPiz座の4系統の複対立遺伝子、第5群はPita座の7系統の複対立遺伝子を配置する。親和性の反応を示したコード番号の合計でレースを表す。複対立遺伝子座については、i, k, z, taの遺伝子座を示す記号を各遺伝子座の前に挿入する。
    たとえば、すべての判別系統に親和性反応を示す場合のレース番号は、「73-i7-k177-z17-ta733」となる。
  5. 本判別システムは、今後得られる新規の抵抗性遺伝子についても無理なく取りこめる規則性、柔軟性、拡張性がある。
  6. 本判別システムは国外内の学会等で提案し、意見を集約させて作成した。
成果の活用面・留意点
  • フィリピン、インドネシア、ベトナム、中国、韓国、IRRI等のネットワーク研究者で利用すると共に、新たないもち病菌レースの評価データとの確認作業を経て最終的な判別体系として確定する予定である。また一遺伝子系統群は、IRRIに無償で分譲を求めることが出来る。
図表1 214690-1.pdf
図表2 214690-2.gif
図表3 214690-3.gif
図表4 214690-4.gif
図表5 214690-5.gif
カテゴリ 病害虫 いもち病 水田 抵抗性 抵抗性遺伝子 品種 防除

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