タイトル |
冷害年における高標高地産水稲コシヒカリ種子の発芽能力 |
担当機関 |
長野県農事試験場 |
研究期間 |
1993~1995 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
栽培不適な高標高地で採種された水稲種子は、栽培適地で採種された種子に比べ発芽率、発芽勢及び苗質が劣る。
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背景・ねらい |
長野県の水稲奨励品種は標高で区分し普及地域を定めているが、コシヒカリ等の品種は良食味志向を反映し、いわゆる「山登り」現象によって限界標高を越えて作付けされる事例が少なくない。本県の採種圃はすべて栽培適地内に設置されており、種子更新率70%を越えている。しかし、高冷地を中心に適地以外で採種し、その種子を用いている例が見られる。このため、標高の異なる各地で採種した種子の発芽能力及び苗質の検討を行い、健全種子の安定供給のため指標を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- 栽培適地を標高700m以下としているコシヒカリの場合、冷害年には標高1100mでは全く稔実せず、標高700m以下産の種子は発芽率は90%以上・発芽勢85%以上を確保できるが、栽培適地を越えた標高800m以上産の種子は発芽率が90%以下で、発芽勢は標高700mを境に急速に低下し発芽能力が劣る(図1)。籾の千粒重は標高700m以下の産地は24~25gであるが標高800m以上の産地では20~23gに低下する(データ略)。
- 冷害年の種子を用いて育苗した場合、苗の乾物重、葉数及び草丈は採種地の標高が700mを越えると急速に低下し(図2)、出穂後40日間の平均気温18℃(積算気温で732℃)以下で稔実した種子は20日間育苗で2.5葉以上・乾物重20mg以上を確保できず生育も不揃いで苗質が劣る(図3)。
- 採種地の標高と発芽勢には負の相関が、出穂後40日間の平均気温と発芽の間には正の相関が認められ、採種地の標高と苗質との間には負の相関が、出穂後40日間の平均気温と苗質の間には正の相関が認められる。
- 優良種子の生産条件としては、冷害年でも出穂後40日間の平均気温が安定して18℃(平年では20℃)以上確保できる栽培適地内であることが必要である。
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成果の活用面・留意点 |
採種圃の設置基準の指針とし、自家採種を行う場合については指導上の資料となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
育苗
自家採種
水稲
凍害
品種
良食味
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