タイトル |
都内産肉豚の脂肪性状 |
担当機関 |
東京都畜産試験場 |
研究期間 |
1994~1994 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1995 |
要約 |
しまりがよくない脂肪(中間脂)や軟脂の発生原因について調査した結果、中間脂については原因を明らかにすることはできなかったが、軟脂は一般に指摘されているように残飯多給がその主な原因と思われる。また脂肪の評価は枝肉の取り引き現場では通常人の手の触感で行われているが、硬軟の区別がはっきりしているものについてはかなり正確に評価されていたが、その境界部分では評価にバラツキがあった。このため正常な脂肪と中間脂の境界部分の性状を持った豚が多い場合は、中間脂と評価される割合が高まる傾向にある。
|
背景・ねらい |
近年、都内産の肉豚は、共進会の審査講評等で「脂肪のしまりがあまりよくない」豚の発生率が高いという指摘を受けていた。そこで、平成5年度に開催された共進会の出品豚(48戸199 頭) を対象に、出品農家ごとの脂肪性状を共進会での触感による判定成績からだけではなく、理化学性からも調べて中間脂や軟脂の発生原因を検討した。 なお、脂肪の理化学性は出品豚より腎臓周囲脂肪を採取し、これを用いてヨウ素価はウィイス法、融点は上昇融点法、脂肪酸組成はガスクロマトグラフイーで測定した。
|
成果の内容・特徴 |
- 共進会での触感による脂肪の硬軟判定結果をヨウ素価との関連で調べてみると、図のとおり全体的にはヨウ素価の値に沿って判定されていたが、硬軟の境界部分と思われる範囲では評価が別れ、触感による脂肪の硬軟判定傾向と脂肪の理化学性との関係は、表1のようになった。
- 脂肪の質に問題がある中間脂及び軟脂は、表1より明らかに中間脂や軟脂と判定できる範囲、すなわちヨウ素価64~69の範囲を「中間脂」、ヨウ素価72以上を「軟脂」として全調査豚を分類したところ、中間脂豚は6戸41頭出品中7頭、軟脂豚は4戸18頭出品中14頭が該当していた。
- これらの農家の飼養管理状況(主にエサの種類、給与量、給与方法等)を調査した結果、軟脂豚の発生が見られた4戸は、特徴としてすべて残飯多給の飼養形態を取っており、他の農家では残飯多給及び軟脂豚の発生がないことから、軟脂の発生は一般に指摘されているように残飯多給が原因と思われる(表2)。
一方、中間脂豚の発生農家については、飼養管理面からは原因が掴めなかった。個体的に何らかの感作を受けて脂肪のしまりが悪くなったものと思われる。
- また、触感による判定は硬軟の境界部分では評価にバラツキがあることから、正常な脂肪と中間脂の判定が難しい理化学性をもった脂肪(ヨウ素価59~63)の出品豚が多い場合は、中間脂等の脂肪の質が悪いと評価される割合が高まる傾向にあると考えられる。
|
成果の活用面・留意点 |
- 都内産の肉豚は「脂肪のしまりがよくない」と言われていたが、今回の調査では中間脂豚の発生率は全体の5%、軟脂豚を含めても12.1%であり、全国平均からしても高くない結果となった。
- 触感による判定傾向から脂肪(腎臓周囲脂肪)の理化学性は、ヨウ素価は58以下、融点は40℃以上、C18:2/C18:0比は0.54以下の豚を生産することが脂肪の評価で枝肉の格付けが落ちない一つの基準値と考えられる。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
カテゴリ |
飼育技術
豚
|