タイトル |
礫質灰色低地土水田の硝酸態窒素浄化能 |
担当機関 |
愛知県農業総合試験場 |
研究期間 |
1996~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
浸透速度が標準的な礫質灰色低地土水田では、かんがい水中の30mgN/L程度の硝酸態窒素は、イネに被害を生じさせることなく土壌浸透によってほぼ完全に除去されることを明らかにした。
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背景・ねらい |
農業地域から流出する硝酸態窒素の負荷軽減策のひとつとして水田の水質浄化機能の活用が考えられる。農業水利において水田での循環再利用システムが取り入れられれば、水田群が内湾など水域の浄化に果たす効果が期待できる。また、今後、農業が地域社会の中でより重要な存在として認められるためには、商品としての農産物の価値以外に、このような環境保全機能を広く市民に知らせることが有効と考えられる。そこで、水田の硝酸態窒素浄化機構、能力を評価するとともに、高濃度硝酸態窒素のイネへの影響を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 本成果は次の条件で得られた。調査対象:愛知県渥美町の野菜畑地帯の地下水かんがい水田(0.3ha)。土壌:礫質灰色低地土、土性SCL、TN 0.94g/kg、TC 9.4g/kg。かんがい水量:1354mm、降水量:685mm。浸透速度:14mm/d、浸透水量:1568mm。表面排水なし。中干しなし。稲わら無施用。施肥窒素量(鶏糞を主体とした肥料、TC155kg/haを含む):34kgN/ha。品種:コシヒカリ(5月11日移植、9月6日収穫)。
- 以上の条件で、濃度34mgN/L、総負荷量444kgN/haの硝酸態窒素が、土壌浸透過程における脱窒によってほぼ完全に除去された(図1)。
- 硝酸態窒素除去速度は、田面水の硝酸態窒素濃度に比例し、大きい場合には1gN/m2/dを超える(図2)。
- 脱窒は湛水後速やかに駆動し始め、硝酸態窒素は大部分の根に到達しないうちに、作土表層で消失する(図3)。
- 3年間の調査で、イネの窒素吸収量は100~115kgN/haと正常で、収量は500~600kg/haと地域の標準以上であり、硝酸態窒素高濃度の悪影響は認められない。
- 栽培後期に間断かんがいを行った場合には、脱窒は不完全となり、10mgN/L程度の硝酸態窒素が流出する。
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成果の活用面・留意点 |
- 浸透速度が標準的な水田で適用可能。
- 黒ぼく土など透水性の大きな水田土壌では、脱窒が不完全になることが明らかにされているので、許容濃度は数mgN/Lとする。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
水田
施肥
鶏
品種
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