シクラメン病害抵抗性育種のための中間母本の作出

タイトル シクラメン病害抵抗性育種のための中間母本の作出
担当機関 埼玉県園芸試験場
研究期間 1995~1996
研究担当者
発行年度 1996
要約 栽培シクラメン(Cyclamen persicum)に野生種(C.graecum)の病害抵抗性などを導入するために交配を行い、胚珠培養によって種間雑種を得た。この雑種は栽培シクラメンよりも三種類の病気に強く、稔性があるため育種の中間母本としての利用が期待できる。
背景・ねらい 現在の栽培シクラメンはCyclamen persicum一種の改良によって育成されてきた。シクラメン属の中にはその他に18種が知られているが、これらの種は栽培化されず、育種の素材としても使われてこなかった。これらの中には有用な形質を持ち、育種の素材として期待される種もあるが、交配不和合性のためC.persicumとの種間交雑は不可能であった。しかし、胚珠培養によるC.persicumとC.hederifoliumの種間交雑の成功以来、他の種間交雑も可能となった。ここでは、C.persicumにC.graecumの耐病性、秋咲き性などを導入するために種間交雑を行い、中間母本として利用できる種間雑種を得ようとする。
成果の内容・特徴
  1. C. persicum 四倍体`サーモンスカーレット'(2n=4x=96)×C. graecum(2n=84)の場合、交配後35日までは雑種胚が生存しているが、42日目にはすべての雑種胚が崩壊する(データ省略)。
  2. 雑種個体を得るには雑種胚が崩壊する前の交配後約35日に子房を採取して、70%エタノールで1分間、1%アンチホルミンで15分間表面殺菌し、胚珠を胎座をつけたまま取り出す。これらをMS+ショ糖3% +ココナットミルク10%+ジェランガム2g/l,pH5.8の培地に置床し、25℃・暗黒で培養する。培養の結果、実生(シクラメンの種子を土に播種したときに見られる実生苗に似ている)と胚(シクラメンの種子胚に似ている)が得られる(表1)。前者は25℃・蛍光灯照明下に移して緑化した後に順化する。後者は胚珠培養と同じ培地、培養条件で継代培養すると、実生と同じ形態の幼植物に生長する。これを蛍光灯照明下で緑化した後に順化する。この方法により、両親の染色体の半数の和に当たる2n=90の染色体を持つ雑種個体が得られる。この個体は自殖によって種子を形成する(表2)。
  3. 雑種は、夏の高温期に休眠し、容易に夏越しができる。また、休眠から醒めた後、特別な処理なしに10月中・下旬に開花する(データ省略)。雑種のF2は、葉腐細菌病、芽腐細菌病、萎ちょう病に対して抵抗性であるが(表3)、炭そ病に対しては感受性である(表4)。
  4. C. persicum四倍体`サーモンスカーレット'(2n=4x=96)×C. graecum(2n=84)の雑種は染色体倍加処理をしなくても稔性があり、減数分裂第一中期において高頻度で45個の二価染色体を形成した(データ省略)。これは、C.graecumが自然状態でできた同質四倍体(2n=4x=84)で、この雑種は四倍体間の交雑によってできた複二倍体であることを示唆し、この雑種とC. persicum二倍体品種、四倍体品種との交雑親和性は高く、それらの後代においても不稔性は見られない。
成果の活用面・留意点
  1. 雑種の自殖後代においても高い種子稔性がある。
  2. 雑種は、葉腐細菌病、芽腐細菌病、萎ちょう病に対する抵抗性品種を育成するための中間母本として適当であるが、炭そ病抵抗性品種の育成には不適当である。
図表1 215346-1.gif
図表2 215346-2.gif
図表3 215346-3.gif
図表4 215346-4.gif
カテゴリ 育種 シクラメン 抵抗性 抵抗性品種 播種 病害抵抗性 品種

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