タイトル |
陸稲「関東糯172号」に由来する餅硬化性の遺伝様式 |
担当機関 |
茨城県農業総合センター |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
餅硬化性と正の相関を示すピーク温度と糊化開始温度を指標として、陸稲「関東糯172号」の餅硬化性の遺伝を検討した。F2とF3世代の分離から、関東糯172号の餅硬化性に関連するピーク温度には単一の優性遺伝子が関与し、糊化開始温度はピーク温度に関与する遺伝子の多面作用、あるいは、密接に連鎖する不完全優性遺伝子により支配されていると推察された。
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背景・ねらい |
陸稲は水稲に比べ餅生地が固まりにくく、加工適性が劣るとされる。今後、陸稲の需要拡大を図るには、米菓原料としての加工適性の向上や餅食味の改善を行う必要がある。 ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)によって測定された糊化開始温度およびピーク(最高粘度到達時の)温度が餅硬化性と正の相関を示したので、糊化特性を指標とした陸稲品種における餅硬化性の検索を行ったところ、高度硬化性を示す関東糯172号を見出した(平成8年度成果情報)。餅硬化性の育種を効率的に進めるため、RVAを利用し、本系統に由来する餅硬化性の遺伝様式を検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 関東糯172号×水稲マンゲツモチのF2個体におけるピーク温度の分離を調べた。出穂後30日間の積算気温とピーク温度を検討したところ、F2個体は関東糯172号・F1型とマンゲツモチ型に分離し、出現頻度は63:31で優性遺伝の期待値に適合(χ2= 3.19、0 .05&st;P<0.10)した。両群とも出穂後30日間の積算気温とピーク温度の間にそれぞれ正の相関関係(r=0.897***、r=0.968***)を示した(図1)。
- ピーク温度と糊化開始温度の関係を調べたところ、1で示した関東糯172号・F1型は、糊化開始温度において関東糯172号とF1個体の付近にそれぞれ分布したので、前者を関東糯172号型、後者をF1型とした。一方、図1でマンゲツモチ型に分類された群では、糊化開始温度の分離を認めなかった(図2)。
- F2世代で関東糯172号型とマンゲツモチ型に分類された2群は、F3世代においても糊化開始温度の分離を認めず、両群はホモ型であることが示された(図3)。一方、F2世代でF1型に分類された群は、F3世代でも3群に分離することから、ヘテロ型であることが明らかになった(図4)。
- F2世代でF1型とされた群は、F3世代において3群に分離した。関東糯172号型、F1型、マンゲツモチ型の出現頻度は53:118:39で、1遺伝子における不完全優性の期待値に適合(χ2= 5.09、0 .05&st;P<0.10)した。これらの結果、関東糯172号の餅硬化性に関連するピーク温度には単一の優性遺伝子が関与し、糊化開始温度はピーク温度に関与する遺伝子の多面作用、あるいは、密接に連鎖する不完全優性遺伝子により支配されていると推察された。
- 各群のF2個体やF3個体においてピーク温度と糊化開始温度が、高低両方向へ分布するのは、登熟期の気温などの影響と推察された(図1)。
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成果の活用面・留意点 |
「関東糯172号」を、育種母本として用いる場合、株枯れ病抵抗性に注意して選抜する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
育種
加工適性
需要拡大
水稲
抵抗性
品種
陸稲
良食味
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