トマトのセル成型苗直接定植における生育制御のためのかん水施肥栽培法

タイトル トマトのセル成型苗直接定植における生育制御のためのかん水施肥栽培法
担当機関 愛知農総試
研究期間 1997~1998
研究担当者
発行年度 1997
要約 トマトのセル成型苗直接定植において、生育制御を容易に行うことができる「かん水施肥栽培法」を開発した。この栽培法は、水と肥料を培養液として常に同時に施用しながら、定期的にリアルタイム栄養診断を行い、結果をフィードバックして培養液濃度を調節するシステムであり、この栽培システムでの促成及び半促成栽培におけるセル成型苗直接定植のための培養液窒素濃度管理モデルを作成した。
背景・ねらい トマトのセル成型苗を本ぽに直接定植する栽培は、草勢が旺盛となり、生育制御が困難で、収量や品質が低下しやすい。その主原因は、第1果房が開花直前の苗を定植する慣行栽培と同じ水分及び施肥管理を行っていることにあり、セル成型苗の直接定植に適した水分・施肥管理法を確立する必要がある。そこで、セル成型苗直接定植において、生育に合わせて必要な養水分を同時施用する「かん水施肥栽培法」を開発する。
成果の内容・特徴
  1. かん水施肥栽培法は、水と肥料を培養液として常に同時に施用しながら、定期的にリアルタイム栄養診断(主に、葉柄中硝酸濃度を測定)を行い、その結果をフィードバックして培養液濃度を調節する栽培システムである(図1)。
  2. セル成型苗直接定植前の基肥は、無施用とする。培養液は、山崎処方(トマト用、微量要素は含まない)、または複合液肥の希釈液を用いる。
  3. かん水開始点の判断は、かん水チューブ横の土壌深15cmに設置したテンシオメーターのpF値(生育ステージにより調節)に基づいて行い、1回あたり2リットル(1株につき)施用する。
  4. 半促成栽培及び促成栽培の生育初期(第3、4果房開花期まで)のかん水開始点は、上中物の収量性が優れ、障害果発生の少ないpF2.5(表1)、以降のかん水開始点は、pF2.3とする。
  5. 生育初期に施用する培養液窒素濃度の上限は、慣行施肥による鉢上げ苗の初期生育との比較から100ppm程度と考えられる(データ略)。
  6. 定期的なリアルタイム栄養診断は、各果房の果実が肥大する果径3~5cmのとき、その果房の直上葉または直下葉の先端葉柄をサンプリングして行う(第1果房肥大期以降、7~10日ごと)。診断の結果、葉柄中硝酸濃度が制御目標値を大きく下回る時は以後2倍に、過剰の時は以後2分の1倍に培養液濃度を上下調節する。
  7. 第2果房肥大期以降の葉柄中硝酸濃度を3,000ppm以下に制御すると、空洞果率の上昇や上中物収量の低下が顕著となる。一方、葉柄中硝酸濃度を高濃度に維持制御すると、上中物収量はやや増加するものの、生育は過度に旺盛となり、肥料の施用量は大きく増加し(以上、表2)、土壌溶液中の硝酸濃度は高く推移する(データ略)。
  8. 以上の結果をもとに、トマトのセル成型苗直接定植におけるかん水施肥栽培の培養液窒素濃度管理モデルを作成した(表3)。
成果の活用面・留意点
  1. 培養液施用のためのかん水チューブは、精度が高く、目詰まりのしにくいものを用いる。
  2. 生育制御を目的とする本栽培法は、点滴チューブを用いて必要最小限の養水分を自動給液する養液土耕栽培に応用が可能である。
図表1 215444-1.gif
図表2 215444-2.gif
図表3 215444-3.gif
図表4 215444-4.gif
カテゴリ 肥料 栄養診断 栽培技術 障害果 施肥 トマト

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