水稲単作地帯における農地流動の特徴と農地集積の条件

タイトル 水稲単作地帯における農地流動の特徴と農地集積の条件
担当機関 農業研究センター
研究期間 1997~1997
研究担当者
発行年度 1997
要約 水稲単作地帯を代表する利根川下流地域における農地流動の特徴は、相対(ヤミ)、水稲作付水田のみ、親族関係、の貸借、規模拡大志向農家と借入地のある農家の不一致、ということにある。こうした農地流動構造下では、地域での転作への集団的な対応を梃子とした農地流動の組織的推進が担い手への農地集積の鍵となる。
背景・ねらい 利根下流水田地域は、転作困難な低湿水田基盤下にあって零細な水稲単作の経営構造から脱却し得ずにいたが、近年、後継者層の恒常的農外勤務の一般化と農業従事者の高齢化の進行により、農地流動が急速に展開する兆しが見えてきている。しかし、その一方で、転作も含む大規模な水田作経営の形成が遅れているのも事実である。そこで、当該地域における農地流動の実態を明らかにするとともに、流動化する農地を水田作の担い手に集積させていくための条件について検討した。
成果の内容・特徴
  1. 新利根町では、近年、農地流動化が急速に進展しているが、新利根町3地区128戸の農家を対象に実施したアンケート調査(回収118戸、回収率93%)からもそのことが裏付けられた(表1)。
  2. 農地流動の第1の特徴は相対(ヤミ)の貸借が、基盤強化法(旧利用増進)に基づく貸借を大きく上まわってその主流を占めていることである(表1)。第2の特徴は、それら相対での貸借のほぼ全てが、水稲作付田のみの貸借となっていることである。借地者側の「転作の付随を回避したい」という行動が(表2)、広範な相対貸借の背景にある。農地流動の第3の特徴は親族関係を主体とした貸借にある。平成5年の調査では貸出相手の最大多数を親族関係者が占めていたが、今回の調査でも親族関係者間での農地貸借を最優先する傾向が強く示された(表3)。
  3. こうした農地貸借経路の特質を反映して、現在農地借入をしている農家が、必ずしも規模拡大を志向しているわけではないこと、また逆に、現在、規模拡大を志向している農家に農地が集積しているわけではないことが明らかになった(図1)。
  4. 調査地域内にある太田新田営農組合は、唯一、集落内で今後の担い手として認知され、そこに農地が集積してきている。太田新田の事例は、転作地の団地化を図ることで転作水田と水稲作付け水田の分離についての地域内での合意形成を推進した点に大きな特徴がある。そして、この転作への集団的対応を梃子に営農組合を結成し、その組合が個別農家では対応が困難な転作を引き受けることで地域農業の担い手としての信頼と認知を得ることにより、転作団地以外の水田についても営農組合への集積が進展してきた。
  5. この事例の成功は、転作地を放置したままの相対による農地貸借が主流を占めている湿田水稲単作地帯において、a転作の団地化、bその転作地の耕作も含む水田作の担い手の明確化、cさらにはabを契機とした農地流動の組織的推進、が地域農業の担い手への農地集積の鍵になっていることを示している(図2)。
成果の活用面・留意点 行政当局や指導機関が、自治体における農地流動化システムを構築していく上での参考となる。なお、取り上げた事例は、個別的な転作対応が困難な湿田水稲単作地帯を想定しているので、水田における作付け自由度の高い乾田複合経営地域における農地集積方法はまた異なるものである。
カテゴリ 規模拡大 経営管理 水田 水稲

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