タイトル |
蛍光色素の着色によるアシナガコガネ成虫のマーキング法と野外での応用 |
担当機関 |
茨城県農業総合センター |
研究期間 |
1998~2001 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
アシナガコガネ成虫を蛍光色素のウラニン水溶液に浸漬するこによって,簡便で短時間に大量の成虫を着色標識でき,野外試験において大量の捕獲虫の中から着色虫を容易に判別することができる。
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背景・ねらい |
昆虫の密度推定または移動分散などの生態調査を行う場合に,塗料などで昆虫に標識をして放虫試験を行うことが必要である。しかし,昆虫1頭ずつに標識する作業は多大な労力を必要とするので,大量の昆虫を対象にする場合には限界がある。また,標識作業は,供試昆虫を衰弱させたり昆虫の正常な行動に悪影響を及ぼす原因にもなる。昆虫の生態調査をするうえで,昆虫の行動に悪影響が少なく,しかも大量の昆虫に簡便に標識する手法の開発が求められる。
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成果の内容・特徴 |
- ツイーン40を0.7%加用した4種の蛍光色素1%溶液にアシナガコガネ成虫を浸漬着色した。水溶性のウラニンは,上翅と腹部の間や節間などの虫体の細かな部分までにも色素が浸み込むので,着色10日後(室内飼育)でも色素が落ちることがなく,虫体を水に浸漬して紫外線(波長:365nm)を照射することで着色の有無を正確に判別できた。これに対して,他の3種色素の判別精度は劣った。また,浸漬着色した虫体に直接紫外線を照射しても着色の有無を判別することはできず,さらに,アセトンとエタノールの混合溶液(混合比4:1)を虫体に滴下し,溶出した蛍光色素を判別することは可能であるものの,判別精度はやや劣った。一方,着色作業による供試虫の死亡はわずかであった(表1,図1)。
- 成虫100頭当たり0.01gの蛍光色素による虫体の粉衣は,色素の付着にむらがあるとともに数日の飼育期間中に色素が落ちて判別精度が著しく劣った(表1,図1)。
- ウラニンで着色したアシナガコガネ成虫約20万頭を本虫が多発しているシバ耕地(約60ha)の中心地点で放ち,耕地内全域に設置した芳香誘引剤トラップ(JT製)で再捕獲した。この結果,放虫5日後であってもトラップで捕獲した成虫を水に浸漬し,紫外線を照射することによって,大量の成虫の中にわずかに紛れ込んでいる着色虫を正確に判別することができ(図2),さらに,耕地内の移動分散行動を調査することができた(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
本法はコウチュウ目をはじめ他の昆虫にも応用可能と考えられる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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