タイトル |
エリ蚕卵によるタマゴコバチ類の飼育と特性 |
担当機関 |
長野県南信農業試験場 |
研究期間 |
1996~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
天敵卵寄生蜂のタマゴコバチ類飼育のため、寄生用のエリ蚕卵は既交尾雌を用いて採卵し、4日後に卵を回収し殺卵することで効率的に生産できる。また、飼育にエリ蚕卵を用いることで一般的な代替寄主のスジコナマダラメイガ卵よりも天敵機能が高いとされる大型蜂の生産が期待できる。
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背景・ねらい |
卵寄生蜂のタマゴコバチ(Trichogramma)類は鱗翅目昆虫の卵に寄生し発生を阻止する効果があり、代替寄主を用いて容易に飼育できることから鱗翅目害虫の生物的防除として活用が可能であるが、高い天敵機能を備えた蜂の低コスト大量増殖が課題となっている。代替寄主としてスジコナマダラメイガなどの貯穀害虫の卵が利用されていることが多いが、卵が小さいため過寄生の影響を受けやすく個体が小型化するなどの問題点が指摘されている。野蚕の一種であるエリ蚕は家蚕よりも強健で成長が早く、比較的低コストの人工飼料により通年飼育が可能で卵を得やすい長所があることから、エリ蚕卵によるタマゴコバチの飼育とその特性について検討する。
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成果の内容・特徴 |
- タマゴコバチ寄生用のエリ蚕卵の生産にあたっては、既交尾の雌蛾を用いた方が効率よく採卵でき(表1)、産卵がほぼ終了する4日後にまとめて卵を回収する。エリ蚕胚子の発育を阻止するため、-18℃下に3時間放置し殺卵する。産下7日後以降の卵ではエリ蚕胚子発育のためタマゴコバチの寄生性が劣る(表2)。
- エリ蚕1蛾当たりの平均的産卵数を350粒、1卵当たりのタマゴコバチ平均寄生頭数を30頭余りとして試算すると、1卵当たり母蜂2~3頭の接種でエリ蚕1蛾が産下する卵より最高で約1万頭のタマゴコバチの生産が可能である。
- タマゴコバチはエリ蚕卵で飼育するとスジコナマダラメイガ卵でのものより発育日数が1~2日遅延するが、個体は大型化する(表3)。また、次世代の羽化成虫数が増加し、雌率も高くなる傾向にある(表4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 既存の養蚕施設をエリ蚕飼育と天敵卵寄生蜂の生産に活用できる。
- タマゴコバチの種によってはエリ蚕卵に産卵行動をとっても寄生しないものがある。
- 寄生用卵は冷凍による長期保存も可能であるが、出庫後一部に変色する卵が見られることがあるため、1ケ月以内の飼育には冷蔵保存卵を使用する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
カイコ
害虫
生物的防除
低コスト
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